北欧コーヒーの最新トレンドを知る勉強会 現地レポート(2)

日本からは「フグレン・コーヒーロースターズ」も参加 Photo: Abumi

北欧の焙煎士たちが集まる「北欧ロースターフォーラム」3日間のイベントは、非常に内容の濃いプログラムに溢れていた。

正直に言うと、内容が濃すぎて、「生豆と水分活性」についてのテーマなど、たまにさっぱり理解ができなかった。

さすが焙煎の世界。ノルウェーの政党の集会のほうが、筆者は理解できる。

コーヒーとは科学である

プレゼンで頻繁に登場したのが、数々のグラフと数字。「コーヒーは科学である」ということを実感した。焙煎士たちは、グラフと数字の話が、楽しくて仕方ないらしい。

「コーヒーマインド」というイノベーション

コーヒーマインドという参加者の知覚テスト結果を発表する科学者のJesper Alstrupさん Photo: Asaki Abumi
コーヒーマインドという参加者の知覚テスト結果を発表する科学者のJesper Alstrupさん Photo: Asaki Abumi

今、この業界で噂となっているのが、デンマーク発「コーヒーマインド」という科学的研究に基づいた取り組み。

焙煎する側やバリスタは、主観的な判断で「おいしい」の基準をもちやすい。時には、自分の先入観が入った思い込みの味が、店頭にいるお客さんの感覚や、同僚たちとはかけ離れてしまうこともある。

このコースを受けると、客観的なテストと分析により、酸味や旨みにおける自分の知覚レベルを知ることができるそうだ。

例えば、社内でバリスタたちのレベルを全体的に把握して、ずれている人がいると発見したり、同じ方向へと統一させることにも役立つ。コーヒー界にイノベーションを起こすかもしれない取り組みともいえる。

コーヒーマインドのコンサルタントは、会場の参加者をテスト。結果、驚異的ともいえる平均値を叩き出し、「素晴らしい!」と驚いていた。

会場には、客観的に酸味などを判断する、天才的な鼻や舌の持ち主が何人もいたということになる。

北欧デザインがコーヒーでもイノベーション

コーヒーイベントで見かけるようになってきたロストのサンプル・ロースター Photo:Asaki Abumi
コーヒーイベントで見かけるようになってきたロストのサンプル・ロースター Photo:Asaki Abumi

ノルウェー発のコーヒー発明として紹介されていたのが「ロスト」(ROST)。焙煎機といえば巨大な機械だが、愛好家が自宅で焙煎を楽しめるような小さいサイズの「サンプル・ロースター」を開発した。

これのなにがすごいかというと、従来の焙煎機のデザインとはかけ離れた、「クールなデザイン」だと、松井宣明さんは話す。松井さんは、デンマークのカフェ「デモクラティック・コーヒーバー」(Democratic Coffee Bar)で、バリスタ/焙煎士として5年以上活躍されている。

味をみんなで評価する人気のカッピング

豆の香りや味を審査しながら、得点はスマホで専用アプリに記録。コーヒーの評価は紙に記載が当たり前だったが、デジタル化されてきた Photo:Asaki Abumi
豆の香りや味を審査しながら、得点はスマホで専用アプリに記録。コーヒーの評価は紙に記載が当たり前だったが、デジタル化されてきた Photo:Asaki Abumi

会場では「カッピング」も何度も開催された。これは挽いた豆にお湯を注いで、香りや味を評価するものだ。

特殊なスプーンで、ヒュッとコーヒーを「吸う」。コップを置いたテーブルを人々が周り、「ヒュッ!ヒュッ!」という音が連続するので、初めて見る人は不思議に感じるかもしれない。

コロンビアなどのカッピングのほかに、各業者が参加する「競技」も開催された。指定の豆などで各社が焙煎し、提出。どこが焙煎したかわからない状態で、来場者がカッピングし、評価する。

プロのロースターが集まった時に、どのようなコーヒーがベストとして選ばれるか。「こういう味が勝つのか」と、プロ同士が共に学びあえるのは、この催しならでは。

今回北欧ロースターフォーラムに初めて参加した松井さんは、「カッピングが一番の肥しになりました。高品質のコロンビアやエチオピアを、あの量で一度に飲めるめったにない機会。勉強になりました」と話す。

カッピングをする松井さん(右中央) Photo: Asaki Abumi
カッピングをする松井さん(右中央) Photo: Asaki Abumi

「どれがベストか」は意見が分かれることも。それもありで、「あの総合結果は納得がいかない。どう思った?」と、来場者たちが話し込み、意見交換をする光景が至る所で見られた。

農園にお金をもっと払えば、豆の質は向上するのか?

コロンビアにあるFinca Tamana農園主のElias Roaさん Instagram: @timwendelboe
コロンビアにあるFinca Tamana農園主のElias Roaさん Instagram: @timwendelboe

筆者がトークパネルで特に興味があったテーマは、「もっとお金を払えば、クオリティは上がるのか?」だった。

ここでの「もっと払う」というのは、カフェでお客さんがコーヒー1杯に払う価格ではなく、生豆・焙煎業者が生産者に払う価格を意味する。

「ただお金を払えば、コーヒーのクオリティが上がるかというと、そう単純な話ではないことを我々は知っていますね」と、司会をしていたのは、北欧スペシャルティコーヒー界で伝説的な存在のティム・ウェンデルボーさん。

複雑なテーマなので、ひとつの正しい答えを導きだそうとしていたのではなく、パネリストと来場者全員で意見を出し合う場にしようとしていた。

ホンジュラスからMarysabel CaballeroさんとMoises Herreraさん。コスタリカからMarianela Monteroさんなど、生産者も交えて意見交換 Photo:Asaki Abumi
ホンジュラスからMarysabel CaballeroさんとMoises Herreraさん。コスタリカからMarianela Monteroさんなど、生産者も交えて意見交換 Photo:Asaki Abumi

お金だけにこだわっているだけではなく、契約書よりも信頼関係のほうがもっと大事だとする生産者も。質を高めるためには、みんなでカッピングし、知識を交換し、生産者やサステイナブルな技術に投資することなどが挙げられた。

「お金をもっと払うことに意味はないと、皆さんのやる気をそごうとしているわけではありません。しかし、これは複雑。誰もがもっと払うべきではあるのです」とウェンデルボー氏は会場で話す。

農園で働く人々は、科学的な知識が不足しがちなこともあり、勉強する機会も必要だ。いずれにせよ、生産者を応援し続けていかなければ、質の高いコーヒーは飲めなくなるだろう、というような話がされた。

「北欧のコーヒーカルチャーを知ることができる場所」

今年のフォーラムには、日本からも参加者が3人いた。

デンマークのカフェ「デモクラティック・コーヒーバー」から松井 宣明さん。東京の「フグレン・コーヒーロースターズ」から小島 賢治さんと吉田 友翔さんだ。

オスロ発のカフェ「フグレン」は東京にも支店があり、ノルウェーと日本の交流窓口のひとつとしても活躍中。

オスロにある唯一の店舗フグレン。ワーホリで勤務していた吉田さん、2015年当時の写真 Photo: Asaki Abumi
オスロにある唯一の店舗フグレン。ワーホリで勤務していた吉田さん、2015年当時の写真 Photo: Asaki Abumi

小島さんはフォーラムにすでに数回参加している唯一の日本人。松井さんと吉田さんは、今年が初めての参加だ。

新しい発見や学べたことが多く、「楽しかった」と語る吉田さん。「同じ業界で、自分は方向性はずれていないかを確認し、他の人が何をどう評価しているのかを知ることができる場所です」と話す。

東京とオスロのフグレン両店舗で勤務経験がある吉田さん Photo: Asaki Abumi
東京とオスロのフグレン両店舗で勤務経験がある吉田さん Photo: Asaki Abumi

「ここにいる人たちは、意見が違っても本音で議論します。北欧のコーヒーカルチャーでの先輩方の意見を聞き、みっちりと語りあうこともできる」。

今後、このフォーラムに参加したいと思う日本人へのアドバイスとしては、「英語がわかることが大前提」と吉田さんは即答した。

「プレゼンも理解するのに時間がかかります。カッピングで点数を付ける訓練もしておいたほうが、現場であわてることを防げます」。

このフォーラムの主催者のひとりは、「北欧のコーヒー界の伝説の人」であり、オピニオンリーダーであるティム・ウェンデルボーさんだ。

次回の記事は希少価値のあるウェンデルボー氏特集 Photo: Asaki Abumi
次回の記事は希少価値のあるウェンデルボー氏特集 Photo: Asaki Abumi

次回の記事(3)では、同氏とのインタビュー記事をアップ予定。

Photo&Text: Asaki Abumi