スキー女王ヨーハウグ選手に13か月の資格停止処分 リップクリームに禁止薬物

Photo: Asaki Abumi

10日、ノルウェースポーツ連盟の審議会は、クロスカントリースキー選手、テレーセ・ヨーハウグに13か月の資格停止処分を命じた。

昨年11月には、ノルウェー・アンチドーピング機構は14か月の出場停止処分を要求していたが、それよりも1か月軽い処分となる。

結果、すでに暫定処分を受けている最中であることから、2017年11月18日までの処分となり、2018年に開かれる平昌(ピョンチャン)冬季五輪には間に合うこととなる。

薬物検査で陽性反応を示したクロスカントリースキー女子のテレーセ・ヨーハウグ選手。負傷した唇の治療に使用したリップクリームが原因で、9月16日の首都オスロでの検査で陽性反応を示した。

治療薬は、遠征先のイタリアの薬局でチームドクターが購入したもの。選手は「自分には一切の責任はない」と、記者会見で号泣し、全責任は医師にあるとした。

14ページに及ぶ審議会の声明には、選手は長年トップアスリート界に身を置き、選手としての責任や規則を把握しているべきだったとしながらも、「故意の」禁止薬物摂取ではなかったと判断。

クリームの箱には「ドーピング」と赤い注意印が記載されており、選手の責任放棄に対しては他国の選手やメディアから厳しい批判の声があがっていた。

医師と選手が記憶がないという外箱の注意印 Photo:Lenting Akira
医師と選手が記憶がないという外箱の注意印 Photo:Lenting Akira

一方、審議会は、今回の印は「イタリアのみで使用されていた」もので、ノルウェーのスポーツ界では知られていなかった記号と理解を示す。

しかし、以前から唇が荒れやすいという病状を抱えていた選手には、クリームが「国外の薬局」で購入されていたことも含めて、もっと慎重になるべきだったとする。

選手や弁護士は、「トップアスリートとしての責任の取り方は、プロの医師を信用し、その指示を聞くこと」だと主張し続けていた。しかし、「医師がドーピングリストを確認した“だろう”と、選手はただ信じるべきではあってはならない」とも審議会は判断。

もう一人のクリスカントリースキー界の女王であるマリット・ビョルゲン選手は、ヨーハウグ選手をずっと擁護していた。そもそもの責任は各選手にではなく、スポーツ界の制度そのものにあり、選手ばかりがリスクを負う体制を疑問視

今回の処分が下される前に、審議会への1月の説明の場で、ビョルゲン選手はヨーハウグ選手を保護する発言をしていた。「私も同じ状況にいたら、医師を信じて、リップクリームを再確認することはなかっただろう」と主張。このことに対しては、委員会は「だからといって、ヨーハウグ選手のせいではないとする主張は通用しない」と判断。

とはいえ、ノルウェー・アンチドーピング機構と同様、審議会は、選手の責任が「わずかなもの」であることには同意し、プロの医師の指示を信頼せざるをえなかったであろうということを考慮して、今回の判断に至ったとしている。

ヨーハウグ選手はノルウェー国営放送局NRKに対して、「私の行為が故意のものではなかったこと、チームドクターの指示を疑う余地はなかったであろうことに、審議会が一致したことを嬉しく思います。ドーピングのルールが厳しくあるべきということは理解ができます。それでも、13か月もの処分に至ったことは、間違いだと思います。これから数日間かけて、弁護士と相談し、今後の対応を考えます」と弁護士を通じてコメント。

選手の弁護士は、今回の判断は厳しすぎるとして、「がっかりしている」と地元のメディアにコメントしている。

今回の処分に、さらなる厳しい処分を求めていたノルウェー・アンチドーピング機構などの複数の機関、また、もっと軽い処分を求めていたヨーハウグ選手が異議申し立てをするかは、これから検討される。

Text: Asaki Abumi