ノルウェーの中学生/国語の筆記試験内容「米国大統領選やスキーのドーピング問題を記事形式で書け」

中学校の国語の試験課題の表紙 Photo: Asaki Abumi

クロスカントリースキーを代表するテレーセ・ヨーハウグ選手が、ドーピング検査で陽性反応を示した件は、未だにノルウェーのスポーツ界を騒がせている。

先日、ノルウェー西部の自治体クヴァムにあるクヴァム高校を取材で訪れた。ちょうど試験の時期だったのだが、国語の課題を見せてもらい驚いた。米国大統領選、テレーセ・ヨーハウグ選手のドーピング騒動など、複数のテーマからひとつを選び、「ニュース記事」、「ルポ(ルポルタージュ)」、「インタビュー」のどれかの形式で、700~800文字書け、という内容だった。

9年生にあたる14~15歳が時事問題を把握しており、3つの筆記形式の違いを学んでいるというのだ。

インタビュー形式の書き方は、誰にも予想がつきやすいかもしれない。ニュース記事とは、即座に発生した出来事をすぐさま読者に伝え、最も重要な事柄が最初に、最も重要度の低い情報が後半にくる書き方。ルポというのは、大学などで書くレポートと似ているが、それよりも簡単な形式。即座に重要な情報を優先して伝えるニュースと違い、時間をかけて深堀りしたもので、「はじめに、本文、まとめ」という構成が大事とされる。レポの分かりやすい説明には、「魚」がよく使われる。1匹の魚の図があったとしよう。頭部分が「はじめに」、身体の中央部分が「本文」(ニュース記事ならば冒頭となる、最も重要な情報)、「まとめ」が魚の尾の部分となる。

まさか、ノルウェーでは中学校でレポやニュース記事の違いを学んでいるとは思わなかったので、驚いてしまった。現在、20~30代のノルウェー人の知人何人かに、この3つの違いを中学校で学んだかと聞くと、記憶にない、今でも違いがよくわからないという人もいた。

筆記形式の試験では、生徒が自分の好きな質問を選ぶことができる。各質問には資料も添付されていた。大統領選の課題では、両候補者の選挙前日の演説内容や公約を、ノルウェーの新聞社が要約したニュース記事。ヨーハウグ選手の課題では、「自分は無実だ」と主張する選手側(主に多くのノルウェー人)の視点が報道された新聞社の記事を。そして、WADAの関係者が、「ノルウェーのスキー界はグレーゾーンにいる」と厳しく指摘した、ノルウェー国外からの批判的な意見を紹介した通信社の記事が紹介されていた。

どちらでも、ノルウェーの教育で大事とされている、異なる立場からの見方を紹介した2種類の資料が使用されている。

左がトランプ氏、右がクリントン氏の資料 Photo:Asaki Abumi
左がトランプ氏、右がクリントン氏の資料 Photo:Asaki Abumi

ノルウェーの学校現場をこれまでいくつか取材したが、数学などを抜かして、社会、国語、歴史などのクラスでは、暗記があまり重視されていない。先生の言うことを黙々と聞くことも、教科書を読むこともなく、自由な討論形式が中心であることが多い。正しい答えがあるわけではないので、生徒も間違いを気にせずに発言できる。また、偏った考えにならないように、異なる複数の立場から批判的に考える能力が鍛えられる。

筆者が日本で見てきた教育システムとは大きく違っていた。実は、オスロ大学に入学してから、大学のレポートの書き方を理解するのが大変だった時期があった。すでに質問が指定されているのに、なぜ自分でさらに「問題提起」を考えなければいけないかなど、「書き方」が理解できなかったのだ。なぜ、ノルウェーの学生はその点で苦労していないのかと疑問だったのだが、中学生の時にすでにこのレベルだったのかと、当時の驚きの疑問が多少解決できた。

※試験の表紙写真に、涙の記者会見当時のヨーハウグ選手の顔写真が使用されていたのが印象的だった(冒頭写真)。ノルウェー人は同選手を擁護する人が多いので、意外だったからだ。もし、質問を出した先生が擁護派であれば、もっとましな写真を選んでいただろう。結構、意地悪な写真の選び方だ。それにしても、自分が14歳だった頃に、米国の選挙結果のことを客観的・批判的な視点で800文字で書けただろうかと考えると、疑問だ。