男女平等先進国ノルウェー、でも時にふと感じる違和感。専業主婦はだめなの?北欧モデルは日本に合うのか

ノルウェーの男女平等システムは、日本で可能か Photo:Asaki Abumi

理想が高い「北欧モデル」は日本で実現可能なのか?

「男女平等を実現した国」と知られるノルウェーでは、その実例を参考にしようと、日本から視察団体が訪れることもある。しかし、その実態を目の当たりにすればするほど、男性優位の日本社会との大きな距離感を体感し、「そう簡単にはいかない」と肩を落とす人もいる。

「北欧モデルは、日本には合わない」、「人口520万人という小国だからこそ、容易に革命が起こせたのだろう」、「すごいな、とは思うけれど…」と、大きすぎる違いに、見えない壁を感じる人々にこれまで出会ったことがある。

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ノルウェーでは「専業主婦」は肩身が狭い?

筆者もノルウェーに住んでいると、平等が進みすぎた国に、時に違和感を感じることがある。

女性が働くことが当たり前のノルウェーでは、「専業主婦」という肩書きが、「肩書き」としても見られないことがある。「せっかくの学歴がもったいない」、「社会に貢献していない人」とも捉えられることも。

以前、筆者の日本にいる友人が「結婚をして、寿退職した」ことをノルウェー人に話した時に、非常に驚かれたことを覚えている。「どうして、結婚したからといって仕事を辞めたの?どういうこと?ああ、でも物乞いをするロマ民族の社会にも、そういう暮らし方があるみたいね。それと同じなのかな」と言われて、驚いた記憶がある。このような会話では、正直、ちょっとイラッと、もやもやすることもある。

「ノルウェーでできるのだから、日本でもできるはずよ」と、ノルウェー人のさらりとした発言に、「うーん」と言葉がでなくなることもある。

裕福なノルウェー人男性と結婚した、専業主婦のアメリカ人女性はこうつぶやいた。「ノルウェーで“あなたは何をしている人なの”という、あの初対面時の定番の質問が、あまり好きではないの。“専業主婦?それで、あなたは何をしている人なの?”という反応をされやすいから」。

極端なパターンだろうが、いずれにせよ、ノルウェーでは専業「主婦」は、良い意味では常に捉えられない側面がある。専業「主夫」は、反対に、家庭に貢献しようとしている男性として、ポジティブに報道されやすい傾向がある。

ノルウェーを知れば知るほど、ふと感じやすい、その違和感とギャップについて、産業革命を推進するイノベーション・ノルウェーCEOのアニータ・クローン・トローセット氏と話しをしてみた。同氏は、ノルウェーでは「働く女性」を代表する企業トップ・母親として知られている。年内にも日本を訪問予定で、日本の働く女性たちとも交流予定だ。

専業主婦という立場が、ポジティブには見られないノルウェーについて

ノルウェー産業界について様々な場で講演を行う同氏 Photo:A. Abumi
ノルウェー産業界について様々な場で講演を行う同氏 Photo:A. Abumi

「ああ、そうね。物価が高いノルウェーでは、家族を養うためには、カップルの両方が働いている必要があります。むしろ、片方が働かずに家にいられるとしたら、ノルウェーでは高いステイタスかもね。ノルウェーで暮らしていくのなら、男女両方からの収入が必要ですから。ただ、その場合、女性はパートタイムで働いていることも多いわ」と語る。

※ノルウェーでは、男性がフルタイムで働く一方、女性はパートタイムが多いという事実は、「男女平等政策がまだ実現できていない証拠だ」、という議論になりやすい。

専業主婦であっては、いけないのでしょうか?

「専業主婦であることに罪悪感のようなものを感じる必要は、私はないと思っています。今は2016年。“自分にとって一番”と思える個人の選択肢をもてるべきです。専業主婦になることになったとしても、それはその人の選択。大事なことは、“自由”に自分で人生の道を選べること。専業主婦だからといって、働いている人々よりも劣っているわけではないわ」。

「小さな国だからこそ可能、北欧モデルは日本には合わないかも」とふと感じてしまうことについて

「日本は大きい国ですものね! 問題は、国のサイズよりも、文化だと私は思っています。奥底にがっつりと居座っている文化を、変えられるかが課題。日本の文化は特に深いものですよね」と、法律で変えようとするだけでは、男女平等実現は難しいと語る。

克服するべき課題は文化。でも、法律や政策改善も、変化を起こすきっかけになる

「文化は根強いため、変化を起こすまでに、私たちの想像以上に長い時間がかかります。世代で引き継いで、時間をかけていく必要がある。でも、だからといって、法律や政策改善の面であきらめることはないわ。必ず、なんらかの形で、それも効果を発揮するのですから」

「私たちの中に、文化というものがどれだけ頑固にへばりついているか、過小評価するべきではありません」

一歩先を行くロールモデルの存在が、きっと少しずつ変化を起こす

「日本ではシニア世代が非常に高い位置にいますよね。産業界でも、重要なイスに長く座っているのは男性でしょう? 今の女性だけで、簡単にその常識を変えていくことは、難しいかもしれません。それでも、その中で、誰かがロールモデルとして一歩先を歩いていくことが非常に重要です。その人の姿勢が、男性中心だった社会構造を崩していく、小さなきっかけとなることができるはず。女性が男性のように振る舞う必要もないわ。その人はその人らしく。色々なかたちのリーダーがいていいはずですからね」。

時間をかけて、少しずつ変えていく必要がある文化

男性ばかりのシーンはノルウェーでは時に不自然に写るPhoto: A Abumi
男性ばかりのシーンはノルウェーでは時に不自然に写るPhoto: A Abumi

先日、オスロ市内ではノルウェーの気候変動問題における重要な会議が開催された。そこでスピーチをしていたのは、各産業界のトップたちで、そして男性ばかりだった。大手エネルギー会社Statkraftの代表ヒルデ・バッケン氏は、その中で唯一の女性。「あら、女性は私だけ」と冒頭で発言。無意識での指摘だったのだろうか、マイクの前でさらりとでてきた言葉とその光景は、ノルウェーらしいなと感じた。

※追記 

今回は主にインタビューが中心です。説明が足りないというものも含め、複数のフィードバックをいただきましたが、文字数の関係もあり、歴史・社会・政策・労働環境の比較など、全体像をまとめた説明は抜けているという欠点があります。「北欧やノルウェーはこうだ」と断言しているのではなく、立ち位置を変えれば、こういう捉え方もあるといういうことで、数多くある情報のひとつとして目を通していただければ幸いです。

専業主婦については、メインストリームとされない意見は、ノルウェーでは公の場で大きく口にできない雰囲気があると感じています。当事者は、お茶の間で友人に話していたとしても、公の場で顔と名前をだして問いかけることは、めったにないのではと考え(勘違いかもしれませんが)、今回は筆者の過去のエピソードを盛り込み、アメリカ人の主婦の方の名前は無記名としました。

「平等が進みすぎた」と断定して書きすぎてしまったかもしれませんが、その人の立場や政策や状況によって、進みすぎているか、いないかの感じ方は、状況ごとに判断が分かれると思います。

Photo&Text: Asaki Abumi