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大坂なおみ「スポーツ選手のメンタル」再び語る 初の絵本発売、米TV番組で近況報告

安部かすみニューヨーク在住ジャーナリスト、編集者
米人気トーク番組に出演した大坂なおみ選手。筆者がスクリーンショットを作成。

テニスの大坂なおみ選手が6日、自身初の絵本「The Way Champs Play(チャンピオンのプレーの仕方という意)』を発売した。その宣伝のため5日から2日間、立て続けにアメリカの人気テレビ番組に出演し、近況を語った。

テレビスタジオがあるニューヨークは、大坂選手が幼少期に家族と共に日本から移り住んだ街。5日に出演したCBS局の夜の人気トーク番組、The Late Show with Stephen Colbert (レイトショー・ウィズ・スティーブン・コルベア)では、痛快なトークを放つ人気司会者、スティーブン・コルベア氏に「おかえり」と迎えられた。

滞在中の予定を聞かれた大坂選手は、「祖母が住んでいるので会いに行くのを楽しみにしています。この街はそういう気にさせてくれるので、いろんな所にお出かけもしたい」と答えた。

アメリカでもすっかり有名人の彼女だが、私生活では意外と面が割れないようで、春にツイートした内容をコルベア氏に突っ込まれる一幕も。それはある日、大坂選手の自宅に電気工が訪れ「親はいるか?」「いい家に住んでいるね。両親はどんな仕事をしているのか?」と尋ねられたエピソードだった。

「自分は大坂なおみと伝えたか?」と聞かれると「もちろん言っていないです。言ったらおかしいじゃないですか」と笑顔で返した。

大坂選手によると、フルネームを見て初めて彼女に気づく人も多いと言う。ある日、スエットパンツやパーカーなど適当な格好で空港に現れた彼女は「おそらく男と思われた」(本人談)ようで、保安検査場でパスポートを渡したところ、名前を確認した女性係員が「あなたが...(あの大坂なおみ)?」とショックを受けた様子だったと明かした。

また絵本のタイトルに引っ掛け、「昨年、プレッシャーの中にいるプロのアスリートとして『OKじゃなくてOK』と、自身のメンタルヘルスについての告白もチャンピオンだった(機能した)ね」とコルベア氏に話を振られた大坂選手。この考えに行き着いた過程について問われ、「(問題に対して)逃げずに対処するよう教えられてきたし、そうやって私は数々のことを乗り越えてきたから、それは非常に価値のある教えでした。ただある時(耐えようとしている自分に)『なぜ?』と疑問が湧いたのです」と答えた。

告白後はしばらく自宅に身を寄せていたといい、その後、東京オリンピックに出場。そこでたくさんのアスリートが応援していると直接声をかけてくれたと言う。「その人たちは私がテレビで観ているような人たちでしたから、とても光栄に思いました」。

翌朝は朝の人気トーク番組、ABC局のGood Morning America (グッドモーニグ・アメリカ)とNBC局のToday with Hoda & Jenna(トゥデイ・ウィズ・ホダ&ジェナ)にも出演(後者はアリシア・キーズと共演)。

番組ではこの日が出版日となる絵本について、「自分も子どものころに絵本からたくさんのインスピレーションを受けたので、私から次の世代の子どもにスポーツを通してエンパワーし同じ体験をシェアしたい。外に出てスポーツをしたり、運動でなくても新しいアドベンチャーに出合ったりしてほしい」と語った。

これらの番組でも司会者にメンタルヘルスの問題を自分の声で公にしたことについて尋ねられた大坂選手は、「昨年テニスから離れてメンタルを休ませたことは自分にとって『必要』なことでした」と振り返った。

「まず私は正直な自分を誇りに思っています。それで時々トラブルになることもあるけれど...。実は告白は恥ずかしいことでもありました。なぜならアスリートであれば強く、それを乗り越えて然るべき存在と思われているふしがあるから。だけど自分の本当の気持ちを表明しようと思った。それによってさらに強くなれるから」

メンタルヘルスを理由に東京オリンピックの団体総合決勝を途中棄権した体操のシモーン・バイルス選手についてどう思うかと聞かれると、「告白は彼女にとっても勇気がいったことだと思います。でも彼女の決意について周りの人々はサポートしていると思う」と答えた。

大坂選手がこのように子ども向けの絵本を制作したり、子どもにスポーツの機会を与える「Play Academy(プレーアカデミー)」を共同設立したりとテニス以外の活動が多忙になる中、「来年はコートに戻ってくるのか?」と問われた彼女は、このように答えている。

「私は、好奇心の塊なので与えられたものに楽しく取り組んでいます。でも私はテニス選手ですから、テニスを長い間しないと痒くなるのです」

来年も引き続き、大坂選手のプレーを見ることができそうだ。

(Text by Kasumi Abe)無断転載禁止

ニューヨーク在住ジャーナリスト、編集者

米国務省外国記者組織所属のジャーナリスト。雑誌、ラジオ、テレビ、オンラインメディアを通し、米最新事情やトレンドを「現地発」で届けている。日本の出版社で雑誌編集者、有名アーティストのインタビュアー、ガイドブック編集長を経て、2002年活動拠点をN.Y.に移す。N.Y.の出版社でシニアエディターとして街ネタ、トレンド、環境・社会問題を取材。日米で計13年半の正社員編集者・記者経験を経て、2014年アメリカで独立。著書「NYのクリエイティブ地区ブルックリンへ」イカロス出版。福岡県生まれ

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