ヴィッセル神戸の新体制に見える不安
総失点を減らす作業は、現状では未知数と言わざるをえない。センターバック陣ではブラジル出身のダンクレーが退団し、貴重なバックアッパーだった渡部博文がレノファ山口へ移籍。補強は期限付き移籍先の横浜FCで28試合に出場した、20歳の小林友希の復帰にとどまっている。 少数精鋭でスタートした陣容へコロナ禍による過密日程が加わった昨シーズンを、チーム全体の総力および地力が足りなかったと振り返る平野SDは、新チームの現状をこうとらえている。 「昨シーズンの後半はある程度リーグ戦を犠牲にしながら、ACLを見すえてチーム全体の底上げを図ってきました。その意味ではある程度の、一定の評価をしています」 J1リーグの舞台で武者修行を積んだ小林と、重用されたACLでさまざまな経験を味わった24歳の菊池流帆、23歳の山川哲史の成長度合いが、35歳のベルギー代表トーマス・フェルマーレン、29歳の大崎玲央が健在のセンターバック陣における今シーズンのプラス材料になる。 最終ラインにおける不安材料はまだある。不動の右サイドバックとして2年間プレーした西大伍も浦和レッズへ移籍したため、ACLで不慣れながら右サイドバックを務めた山川、左右両方でプレーできる初瀬亮、ジュビロ磐田から加入した31歳の櫻内渚らが西の穴を埋めなければいけない。 アカデミー出身のGK吉丸絢梓とDF藤谷壮(ともにギラヴァンツ北九州)、MF小川慶治朗(横浜FC)も出場機会を求めて神戸を去った。対照的に新たに加入する日本人選手は、前出の小林と櫻内の他にはGK廣永遼太郎(サンフレッチェ広島)、MF井上潮音(東京ヴェルディ)、MF櫻井辰徳(前橋育英高)と、アビスパ福岡への期限付き移籍から復帰するMF増山朝陽だけとなっている。 元ドイツ代表FWルーカス・ポドルスキ(現アンタルヤスポル)を皮切りにイニエスタ、FWダビド・ビジャ(引退)、フェルマーレンと大物外国籍選手を次々に獲得。MF山口蛍、DF酒井高徳らの日本代表経験者を迎え入れてきた神戸だが、昨シーズンから「10番」を背負う選手が不在のままになるなど、コロナ禍のもとで補強戦略は大きな転換を余儀なくされていると言っていい。 「コロナ禍の現状では、外国籍選手を獲得するのが非常に難しい。いまは補強の部分がしっかりとできている状態ですが、国内の選手も含めて、年間を通してチームを強くするために補強を続ける、というところは変わりません。いろいろな状況に対応できるようにしています」