ヴィッセル神戸の新体制に見える不安
6連敗中はわずか2ゴールと決定力不足までもが顔をのぞかせたなかで、総得点を増やす大仕事を託されるのが「29番」を背負う、20歳になったばかりのリンコンとなる。神様ジーコを輩出した名門フラメンゴの下部組織で頭角を現し、16歳だった2017年11月にトップチームへ昇格した逸材は、元日本代表のFW久保裕也が所属するMLSのシンシナティも獲得を狙っていた。 最終的には移籍金300万ドル(約3億1400万円)、年俸80万ドル(約8370万円)で神戸が一騎打ちを制した。U-17やU-20など年代別のブラジル代表にも選出された、身長180cm体重79kgのストライカーへ、平野SDは「ゴール前で違いを見せてくれる」と大きな期待を寄せる。 「20歳というかなり若い年齢で移籍が実現したのは、非常に稀なケースだと思っています。リンコン選手がヴィッセル神戸に対して非常に強い思いがあり、ここでプレーしたい、という意思をはっきりと示してくれた結果だと感じています。彼の意思というものを私たちもしっかりとくみ取って、必ず彼がこのチームで活躍ができるようにサポートしていきたい」 リンコンの意思とは選手ならば誰もが同じチームでの共演を望む、イニエスタの存在とされている。ただ、フラメンゴのトップチームで残した数字は芳しくない。例えばブラジル国内で最高峰の戦いとなる、カンピオナート・ブラジレイロ・セリエAでは出場37試合で4ゴールにとどまっている。 しかも大半が途中出場で、先発を含めてより多くのプレー時間を望む本人および代理人とフラメンゴとの間で軋轢が生じ、修復不能になったために放出されるに至ったとブラジル国内では報じられた。神戸が当初打診した期限付き移籍ではなく、袂を分かつ完全移籍になった理由とされている。 獲得に名乗りをあげたクラブのなかに、ヨーロッパの強豪が含まれていなかったことも、伸び悩むリンコンの現在地を象徴している。16歳でプロになったキャリアが物語るように潜在能力はあるだけに、神戸で待つイニエスタとの邂逅がどのような化学反応を引き起こすのかにかかってくる。