なぜ2人のレジェンドは”18分間の熱トーク”を繰り広げたのか…小野伸二と中村俊輔が開幕対決直前に語り合ったもの
しかし、雌雄を決するゴールをお膳立てしたのは小野だった。1-1の状況から途中出場してわずか1分後。MFチャナティップからの速い縦パスに、ペナルティーエリア内で相手ゴールに背を向けた体勢で反応する。右足による優しいタッチを介して、左サイドを駆け上がってきたMF石川直樹にわたったボールは絶妙のクロスとなって、中央へ走り込んできたFWヘイスの勝ち越し弾につながった。 俊輔は2019年7月に出場機会を求めて横浜FCへ移籍し、初体験のJ2での戦いへすすんで身を投じた。終盤戦ではボランチに定着して13年ぶりとなるJ1昇格へ貢献し、昨シーズンから主戦場を慣れ親しんだトップ下へ戻し、今シーズンからは自身の代名詞でもある「10番」を再び背負う。 小野は俊輔の横浜FC移籍から約1ヵ月後にFC琉球へ移籍。浦和時代の2000シーズン、札幌での2014-16シーズンに続いてJ2でプレーした後に、日本列島の最北端と最南端のJクラブを往復する形で、今シーズンから札幌へと復帰した。前回在籍した約5年間と同じく、十の位と一の位を足せば浦和やフェイエノールト時代に背負い、思い入れも強い「8」になる「44番」を再び選んだ。 紆余曲折をたどりながらもお互いに不惑を超え、大ベテランの域に達した状況で再び顔を合わせるチャンスを、それも国内では最高峰となるJ1の舞台で手にした。代表でも共闘した中澤佑二さんや小笠原満男さん、中村憲剛さんら年齢が近いレジェンドたちが引退したなかで、衰えを知らない情熱とモチベーションの源泉は何なのか。小野は迷うことなく言葉を紡いでいる。 「サッカーをやらせてもらえる環境を、いただけているというのがまずは一番ですね。それがなかったらサッカーができないので。あとはサッカーが好きだという気持ちがまだまだ強いですから、そういうものが情熱を燃やしてくれているんじゃないかな、と思っています」 耳を澄ませていた俊輔が、間髪入れずに「同じです」と相槌を打ちながら笑った。無邪気さすら漂わせる2人のやり取りに見え隠れしていたのは、お互いのキャリアや現在地、そして実力を心の底からリスペクトし、永遠のサッカー小僧ぶりをも自負しあう、純粋無垢なサッカーへの愛情だった。 そして、26日に54歳になるFW三浦知良(横浜FC)を含めて、土曜日の開幕戦へ臨むベンチ入りメンバーを勝ち取り、午後2時にキックオフを迎える札幌ドームの一戦でピッチに立ち、3人のうち誰かがゴールネットを揺らせば――神様ジーコが黎明期の鹿島アントラーズでプレーした1994シーズンに打ち立てた、41歳3ヵ月12日のJ1最年長ゴール記録が27年ぶりに塗り替えられる。 (文責・藤江直人/スポーツライター)