なぜ宇野は団体戦SPで自己ベストを更新できたのか…チェンが羽生の世界最高得点を超えられなかった理由とは…五輪初戦で見えたシングル展望
北京五輪が4日に開幕。フィギュアスケートの団体戦が始まり、男子シングルSPでは宇野昌磨(24、トヨタ自動車)がノーミスの演技で、2018年以来4年ぶりに自己ベストを更新する105.46点で2位に食い込んだ。トップはネイサン・チェン(22、米国)で、羽生結弦(27、ANA)が持つ世界最高 得点に0.11点と迫る111.71点の高得点だった。なぜ宇野は最高の演技ができたのか。それでもチェンに届かず、そのチェンも羽生を超えられなかった理由とは?団体戦SPの結果から男子シングルを展望してみた。
4回転ジャンプをすべて成功
新型コロナの影響で招待客だけに限られ閑散とした首都体育館に熱い拍手が響き渡る。赤と黒の新コスチュームでリンクに現れた宇野は、モーツァルトの名曲「オーボエ協奏曲」にのって冒頭の4回転フリップを着氷させると、セカンドジャンプが2回転になるミスが目立ちなど課題だった4回転トゥループ+3回転トゥループの連続ジャンプを成功させた。 後半の3回転アクセルも決めて安定感抜群の力強いノーミスの演技。2018年のロンバルディア杯で出した104.15の自己ベストを更新する105.46で、五輪団体戦のトップバッターという重要な役割を果たした宇野は、笑顔を浮かべ、日本チームに向かって右手で渾身のガッツポーズを作った。 「このSPを構成通り、ちゃんと最後まで成し遂げられたのは数年ぶり。ようやく練習通りに試合に臨むことができて、たかぶりすぎず、不安になりすぎず平常心のまま滑り切ることができた。失敗したくないという後ろ向きな気持ちで試合に挑むことは絶対避けたいと思って、その辺はしっかり切り分けることができ、ダメだったら真剣に謝ろうと思っていたので無事にできて良かった」 先陣を切る緊張と、慣れない午前中の競技のためか体のキレがなかったという。 チェンジフットシットスピンとステップシークエンスがそれぞれレベル「3」と評価されたことを宇野は、「表現力も全然。スケーティングも伸びていませんでした。スピンも遅かったですし(レベル評価が)落ちても仕方ないなってステップだった」と反省したが、2大会連続のメダル獲得への期待が高まる演技だった。 元全日本2位で、昨春から千葉の「三井不動産アイスパーク船橋」に設立されたMFフィギュアスケートアカデミーのヘッドコーチに就任した中庭健介氏は、「近年の宇野選手のSPの演技の中で一番良かった」と、自己ベストを更新した演技を賞賛し、こう分析した。 「これまでネックだった連続ジャンプを決めたのが大きいです。“降りることができる”という確信を空中で感じることができていました。これまでは、ランディングで上半身が回り過ぎて、着氷後にこらえるようになり、受け流せずスムーズな流れを作れないことが課題でした。でも、この日は、しっかりと修正されて美しいランディングができていたと思います」