なぜ宇野は団体戦SPで自己ベストを更新できたのか…チェンが羽生の世界最高得点を超えられなかった理由とは…五輪初戦で見えたシングル展望
そして中庭氏が、自己ベストを更新した最大の理由としてピックアップしたのが、宇野の覚悟。 試合後の「ダメなら謝ろうと思っていた」の発言に宇野が五輪に向けて準備してきたメンタルの強さを感じたという。 「それを言えるメンタルだったということ。チームに迷惑をかけるという思いが強すぎると演技が硬くなります。ましてやトップバッター。努力と結果を残し続けてきた宇野選手だからこそ言えたセリフだったし、全てを受け入れる覚悟を持った安定したメンタルで試合に臨めている証からの言葉でしょう」 トラブルに見舞われていた。新型コロナの陽性反応が出たため、スイスにいる専属コーチのステファン・ランビエール氏の北京入りが団体戦には間に合わなかった。 中庭氏は、「最終的な技術チェックも含めてステファン氏の不在の影響は小さくなかったと思う。不安もあったでしょう。チームジャパンのメンバーが、宇野選手を励まし支えてフォローしているように見えました。宇野選手をずっと見ている出水慎一トレーナーの存在も大きかったのではないでしょうか」という。 宇野は、「オリンピックは特別な大会。けれど、僕のスケート人生はまだまだ続けるつもりで、もっともっと成長したいという気持ちがある。まだまだ納得しきれてない部分もたくさんあるので、この大きな大会を成長につなげたい」と8日のシングルSPへ向けて気合を入れた。 だが、その宇野の演技を世界選手権3連覇中のチェンが超えてきた。冒頭の4回転フリップを成功させると、3回転アクセルを挟み、得点が1.1倍となる後半に4回転ルッツ+3回転トゥループの連続ジャンプをプログラムしてきて、美しく着氷を決めたのである。演技を終えたチェンは、感情を表に出すことはなかったが、キス&クライで、羽生の持つSPの世界最高得点の111.82に「0.11」差と迫る111.71がアナウンスされると両手を合わせてサムアップした。もちろん自己ベストだ。 「ここにいられて幸せだ。いいスタートを切れたと思う。団体戦には個人とは違った緊張感もある。いい演技ができたことに満足している」 4年前の平昌五輪では、SPで転倒して大きく出遅れ、FSで1位となる得点を獲得したが、羽生の得点には届かなかった。平昌五輪でも団体戦のSPに出場したが、ここでも転倒のミスを犯している。五輪のSPには、苦い思い出があるだけに、なおさらホッとした感情が湧き上がったのだろう。 しかも2位の宇野とは「6.25」差である。 なぜこれだけの差がついたのか。