なぜ宇野は団体戦SPで自己ベストを更新できたのか…チェンが羽生の世界最高得点を超えられなかった理由とは…五輪初戦で見えたシングル展望
中庭氏は、こう分析した。 「まだ4回転+4回転の連続ジャンプが認められていない以上、現状では、4回転ルッツ+3回転トゥループは最高難易度のジャンプです。それを得点が1.1倍になる後半に入れてきた。このエレメンツだけで20.72の高得点。宇野選手の4回転トゥループ+3回転トゥループの連続ジャンプの得点と比べると、このエレメンツだけで4.44差があり、しかも、チェン選手のジャンプの完成度が高く、しっかりと滞空時間を作り着氷にも余裕があった。2人は基礎点で3.77差があり、GOEを加えた技術点では4.96差がつきました。そしてステップ、スピンでも差が生まれた。チェン選手にも4年前の平昌五輪のSPで転倒したというトラウマがあり、SPへの恐怖心はあったのでしょう。それを克服し、今回は調子のピークをここに合わせることができているように見えます」 だが、そのチェンも羽生が2020年の四大陸選手権で更新した世界最高記録を超えることはできなかった。 中庭氏は、この「0.11」差に羽生がチェンに勝ち、五輪3連覇を達成する可能性が秘められていると見る。 「チェン選手は113点くらいかな?と思いましたが、思ったより点数は伸びませんでしたね。羽生選手が世界最高得点を出したプログラムと比較すると、基礎点では羽生選手が劣っていますが、GOEの高さにより技術点で肉薄し、演技構成点では優っています。つまり、ジャンプの質、演技全体の構成力、表現力、芸術性で、羽生選手が上回り、チェン選手の高難度のプログラムに対抗できるということなんです。非常に高レベルでの評価なのですが、チェン選手のジャンプの中には多少スムーズさに欠ける部分もあります。今季は、羽生選手との直接対決がなく、ジャッジが2人を直接比較したときに、どうなるか?ですが、ジャッジの方々でさえ”羽生選手の演技には心を奪われる”と言います。4回転アクセルへの挑戦が注目されているFSの前に、SPで羽生選手がチェン選手を上回る可能性は出てくると思います」 羽生が世界最高得点をマークした時のSPの構成は、4回転サルコー、4回転トゥループ+3回転トゥループ、3回転アクセルで基礎点は45.80。チェンのこの日の基礎点49.87には及ばないが、GOEを加えた技術点の合計では、羽生が63.42、チェンが63.85と肉薄し、演技構成点では羽生が48.40、チェンが47.86で逆転。今回、チェンが自己ベストを出しても羽生の記録には届かないという結果となった。 羽生、チェン、宇野のうち誰が金メダルを獲得してもおかしくない。ミスをした選手が脱落するというハラハラドキドキの激戦となるだろう。団体戦の男子シングルFSは6日。 羽生は、昨年12月のNHK杯を欠場するなど団体戦と個人戦を兼任できるコンディションにはないと見られており、初の五輪となる鍵山優真(18、オリエンタルバイオ・星槎)の抜擢が濃厚。 日本が3位の中国に1ポイント差の4位につけている団体戦の順位は7日に決まり、注目の男子シングルは8日にSP、10日にFSが行われてメダリストが決まる。