欧州仕様の6代目ジェッタはコンパクトセダンの優等生だった【10年ひと昔の新車】
北米仕様とは大きく印象が異なったインテリアの仕立て
2010年6月、フォルクスワーゲンAGはアメリカ・ニューヨークで6代目ジェッタを世界初公開した。ジェッタは当時北米市場で販売台数の約半分を占める人気モデルだった。基本コンポーネンツはゴルフⅥをベースとしていたが、市場のニーズに合わせて、北米仕様と欧州仕様を巧みに作り分けていた。今回はフランス・ニースを拠点に行われた欧州での国際試乗会の模様を振り返ってみよう。(以下の試乗記は、Motor Magazine 2011年3月号より) 【写真はこちら】ワインディングでのアップダウンはきつかったが、その他の状況での動力性能は必要にして十分なレベルだった。(全6枚)
私は昨年7月にサンフランシスコで行われた北米向けジェッタの試乗会に参加した。なんと1万5000ドルという破格のプライスタグを付けた驚きのモデルだったが、その印象はなかなかのもので、日常の使用には十分に耐える実用モデルであった。ただし気になったのは、インテリアに張り巡らされた昔の筆箱のようなハードプラスチックで、アメリカという国の特殊性をここまでも極端に反映してしまって良いものかが疑問になっていた。 そして今回、欧州向けジェッタに試乗するチャンスが巡ってきた。ニースの空港からほんの数百m離れた駐車場に並んでいたのは、見覚えのある端正なデザインを持った4ドアノッチバックセダンだった。 デザインはこれまでのようにゴルフにトランクをとって付けたような形状ではなく、Cピラーも専用設計されている、まさに独立したセダンである。しかもサイズは全長が4.6mでゴルフとパサートの間に位置する。そしてトランク容量は510Lもある。非常に理性的で正確なマーケティングの下に設計されていることがよくわかる。 試乗に選んだのは唯一のガソリン仕様であった1.2TSIで、ブルーモーションテクノロジー搭載モデルである。直列4気筒直噴ガソリンターボは、1197ccの排気量から105ps/5000rpmの最高出力と175Nm/1500~4000rpmの最大トルクを発生する。組み合わされるトランスミッションは6速MTのみで、アイドリングストップシステムを装備している。 キーを受け取り、キャビンに乗り込んで驚いたのは、インテリアに使用している素材の持つ高級感と、その仕上がりの良さである。これはまさにゴルフ並みであった。 試乗会が行われたのは南フランスのニース周辺で、オートルートからモンテカルロラリーのスペシャルステージの峠道まで含んだ、ドライバーにとってもまたクルマにとっても、なかなか走り甲斐のあるコースである。