欧州仕様の6代目ジェッタはコンパクトセダンの優等生だった【10年ひと昔の新車】
サスペンションの出来がよく、コーナリング性能は欧州一だ
走り出してしばらくは流れの速いオートルートをおよそ100km/hで走る。もちろんまだまだ出力的には余裕があり、また高い直進性と、車重と走行性能に見合った十分なブレーキ性能を持っていることが感じられた。しかもキャビン内は非常に静かで、これなら大人5人ないし4人のドライブも快適なものになるに違いない。 しかし、オートルートを離れて山間部に入り、ワインディングでアップダウンが始まると、1230kgの車重に対して105psと175Nmのエンジンパワーはやや不足気味で、アクセルペダルを足跡が付くかと思えるほど床まで踏みつけても、気持ちの良い加速感は得られなかった。しかし4000rpmを超えるほどエンジン回すと、登坂路でも何とか他の一般車両に負けない動きにはなる。 反対に下り坂は1.2TSIの独壇場である。リアサスペンションをトレーリングアームから現行ゴルフと同じマルチリンクにグレードアップしたジェッタのコーナリング特性は、まさに欧州一のレベルにまで高まっており、安心して、思い切ってタイトなコーナーに突っ込んで行くことができた。それは前輪はもちろん、後輪の接地性が格段に向上しているので、滅多なことではリアがブレークすることなどないためである。 また油圧式から電動機械式(EPS)になったステアリングシステムは十分にダイレクトなフィーリングで、しかもフィードバックも正確で、操舵角も適正に当てることを可能にしている。 こうして素晴らしく磨きがかかった上質なセダンとなったジェッタだが、良いことばかりとはいかないのだった。それは価格である。北米仕様のジェッタと同じ場所で生産される欧州仕様のジェッタだが、数々のグレードアップによって、テスト車の1.2Lでさえも、ベーシック価格がドイツで%の付加価値税込で2万0900ユーロ(約240万円)になってしまうのである。 それでも、欧州仕様のジェッタは間違いなく品質にはうるさい日本人が見てもうなずけるクルマに仕上がっていた。しかし、ここまでレポートを読んでくださった方々には申し訳ない報告をしなければならない。 フォルクスワーゲン本社には、このニュージェッタを日本へ輸出する計画はないらしいのだ。確かに、現在の日本市場における輸入車販売の状況を考えると、販売台数のシュリンクしている車種を整理する時期に来ているのかも知れない。 しかし、1年後に登場する予定のジェッタ ハイブリッドは、日本に輸入される予定であると伝えられた。担当者に聞けば、それはスポーティな走りも可能なアクティブなハイブリッドに仕上がっているという。国産ハイブリッド全盛の中で、選択肢が増えるのは非常に良いことで、できるだけ早く日本導入を実現してくれることを願うばかりである。(文:木村好宏/写真:Kimura Office)
フォルクスワーゲン ジェッタ TSI BlueMotion 主要諸元
●全長×全幅×全高:4644×1778×1482mm ●ホイールベース:2651mm ●車両重量:1230kg ●エンジン:直4DOHCターボ ●排気量:1197cc ●最高出力:77kW(105ps)/5000rpm ●最大トルク:175Nm(17.8kgm)/1550-4100rpm ●トランスミッション:6速MT ●駆動方式:FF ●最高速:190km/h ●0→100km/h加速:10.9秒 ※EU準拠
Webモーターマガジン