株価「トランプラリー」に早くも失速懸念 金融関係者が恐れる日経平均“暴落”の日
「トランプ圧勝で含み益が500万円を超えました」 こう話すのは中小型株投資を長年続ける、50代の個人投資家だ。今年の日本株投資の成績は横ばいだが、11月5日の米大統領選を経て、年初から買っていた米国のラッセル2000指数(米中小型株2000銘柄で構成)に連動するETF(上場投資信託)が大幅高となったおかげで、大きなリターンを得たという。 【注目ランキング】役員報酬のベスト50はこちらから 企業のベスト30も(全5枚) 「これで米国株が売りやすくなる」 証券会社の営業担当者も鼻息が荒い。証券会社が軒を連ねる日本橋兜町はトランプ前大統領の勝利で“石破ショック”を乗り越え、再び活気を取り戻しつつあるという。 「トランプ氏が7つの激戦州をすべて制し、上院は4年ぶりに共和党が過半数を獲得。まだ確定していませんが、下院でも共和党が過半数を取る見込みで、そうなればトリプルレッドになった2016年の“トランプラリー”と同じ構図です。当時は大統領選後1年で日経平均が35%値上がりしたことを考えれば、今回も当面は4万円を超えて底堅い値動きになると考えている市場関係者が多い」(大手ネット証券関係者) ■利益が約4%押し上げられる トランプ氏の勝利が報じられた6日にはダウ工業株30種平均、S&P500種株価指数、ナスダック総合株価指数の主要株価指数は揃って過去最高値を更新。日経平均株価も上げ幅は一時、1100円を超えた。 背景にあるのは、トランプ氏が掲げる経済政策だ。その柱である「トランプ減税」は今後10年で10兆4000億ドルに達するとされ、法人税率は現在の21%から15%へと引き下げる見込みだ。米金融大手ゴールドマン・サックスは、この法人税率の引き下げで、S&P500構成企業の利益が約4%押し上げられると試算しており、株価を押し上げる材料のひとつとなっている。
だが、トランプラリーは長くは続かない可能性がある。 第一生命経済研究所の首席エコノミストの永濱利廣氏が話す。 「確かにトランプ政権1期目の前半は株高が進みましたが、米中貿易の競争激化で18年3月にトランプ氏が対中制裁を決定したことを受けて、株安・ドル安が進み始めました。日本も18年11月には景気後退入りし、19年の消費税引き上げ、20年のコロナショックもあり、20年5月まで景気後退局面が続きました。今回も同じ道をたどる懸念があります」 今回もトランプ氏は中国からの輸入品に対して60%の関税をかけることを公言している。さらに、米紙ウォール・ストリート・ジャーナルとのインタビューでは、「中国が仮に台湾に侵攻すれば、関税を150~200%に引き上げる」と発言しているのだ。 関税が引き上げられれば米中貿易摩擦が再び高まるのは必至だ。当然、その影響は日本にも及ぶ。 ■最も少ない5分 「日本の貿易の40%を占めるのが対中および対米貿易。その2つの国で貿易戦争が発生すれば、日経平均の暴落は避けられない。実際、18年は10月のピークから年末にかけて20%以上の下落を見せ、年間を通しても7年ぶりの下落を見せた」(前出の大手ネット証券関係者) 加えて、今回、トランプ氏は「すべての輸入品に10~20%の関税をかける」と公言している。 永田町関係者が話す。 「トランプ氏は同盟国だから関税をかけないというタイプではない。1期目のときも、執拗に2国間の自由貿易協定(FTA)を結ばないと自動車関税を強化すると圧力をかけてきた。当時は安倍元首相が先回りして日EU経済連携協定(EPA)やTPP11(米国を除く環太平洋経済連携協定)を進めるなどして事実上のトランプ包囲網を築くことで関税強化を回避したが、石破政権には交渉ができる人材がいない。今回の当選確定後のトランプ氏と石破首相の電話会談は韓国よりもあとだったうえに、各国首脳のなかで最も少ない5分だけだった。日本の輸出品に対する関税引き上げを回避できるだけの力が石破政権にはないでしょう」