菅政権の「大改革」が成功する条件とは何か その歴史的ヴィジョン
自民党の菅義偉総裁が16日、臨時国会で第99代首相に選出されました。首相交代は7年8か月ぶり。長年前政権の官房長官だったこともあり、基本路線は安倍前政権を継承する形になりそうですが、「縦割り行政の打破」や「デジタル庁の新設方針」など独自色も出しています。 建築家で、文化論に関する多数の著書で知られる名古屋工業大学名誉教授・若山滋氏は、「菅首相の主要政策は大改革しかない」といいます。どのような改革が必要なのでしょうか。若山氏が独自の「文化論」的な視点から論じます。
党員投票の是非
自民党総裁選では大方の予想どおり菅義偉前官房長官が圧勝し、総理大臣となって新しい内閣が成立した。 フルスペックの党員投票を行わなかったことをほとんどすべてのマスコミが非難したが、これはおかしい。非常時には議員の投票で決めるというルールがあるのだ。前総裁が健康上の理由で突然辞任し、未曾有のウイルス禍に見舞われている現在が非常時でないとはいいにくい。もしフルスペックの党員投票を行っていれば、そのことに非難が集中しただろう。 そもそも日本という国は、総理大臣を国民投票によってではなく国会議員の投票で決めるという政治制度である。事実上の総理大臣を決めるのに自民党員だけの投票を加えるというのは一見民主的なようだが、論理的には、全国民の投票で選ぶ国会議員選挙の価値を減じることにならないだろうか。派閥の論理で決められることへの批判はともかく、フルスペックの党員投票を行わないことを、自民党員でもない論者が「党員」を「国民」と言い換えて、国民の声を聞け、などといっているのは批判のための批判に聞こえた。 そして登場した新内閣は、代わり映えしないとか派閥のバランスとか言われながらも、適材適所、実力のありそうな顔ぶれで、新総理の本気度を示すように見受けられる。支持率も高い。今の自民党と、国民のかなりの部分に、安倍政権の政策継承に強い支持があるということを改めて認識させられる。森友学園問題以後の「負の部分」はこれで一段落という気分なのだろう。