考察『光る君へ』18話 道兼の死に涙するとは…玉置玲央に拍手を!まひろ(吉高由里子)は人気ないらしい道長(柄本佑)に「今、語る言葉は何もない」
ここ、倫子の家なんですけども
まだまだ感染症が猛威を振るう。 「道長、伊周を除く大納言以上の公卿は死に絶えた」 次の関白候補は2人のみ。 女院・詮子(吉田羊)が次の関白はお前だと道長を説得する場面、倫子(黒木華)も一緒についてきているので「ここは土御門殿。倫子の屋敷で、倫子と道長の夫婦が女院をお世話してるんですよ」と示されている。そう。世話してもらってるのは女院なのだが、あくまでも強気。中宮・定子ですら無視する詮子さまだもの、弟の妻・倫子なんて。 「そなたは黙っておれ!」と叱責する。ここ、倫子の家なんですけども。女院様、帝の御母上ですからね……強いよね……。 中宮・定子に「人望を得られませ」と言われた伊周が催す宴会。 「亡き父は、皆さまのご意見を聞き入れることの大切さを幾度も私に説いておりました」 その言葉に納得しているものは一人もいなさそうな、列席者の固い表情。 御馳走を前にワクワクしちゃってる、早く食べようよ! という顔の道綱(上地雄介)がとっても目立つ。
「あのひと、人気がないんだ……」
清少納言(ファーストサマーウイカ)・ききょうがまた、まひろを訪ねてくる。 以前は、宮仕えをすることになった嬉しさを聞いてもらいたくての訪問だったが、今回は揺れる宮中の空気に耐え切れなくなって吐き出しに来たとのこと。ききょう、宮中に気を許しておしゃべりできる相手がいないらしい。 ききょうが帰ったあとの、まひろの、 「あのひと、人気がないんだ……」 これに大笑いしてしまった。道長が中宮の贅沢を戒めたという話に「あのひとらしい」と笑いがこみあげ、そうした彼を理解できる自分と、職場で煙たがられている彼の客観的な話を聞いた感慨が入り混じったまひろの背中だった。 それにしても、こうした場面にエレキギターのBGMが流れるの、いかにもこの作品らしいよね! なんとなく80年代の邦画を観てるみたいな、懐かしい感覚を覚える。
定子の悲劇はまだ始まったばかり
女院が眠っていた一条帝のもとを訪れ、涙ながらに道長関白宣旨を迫ったエピソードは歴史物語『大鏡』にある。 我、夜の御殿に入らせ給ひて、泣く泣く申させ給ふ。 (ご自身で帝の御寝所にお入りになって、泣きながら道長のことを仰る) (略) 御顔は赤み濡れつやめかせ給ひながら…… (御寝所から出ていらした女院のお顔は赤く涙で濡れていらっしゃる……) とあるので、ドラマの通り泣きながらの説得であったのかと思われる。そして、一条帝は母の言葉に折れた。 怒りで完全に我を忘れた伊周が定子に吐き捨てる「皇子を産め」。まるで呪いのようだ。 人払いもされず、兄から浴びせられる罵詈雑言。耐え切れずに清少納言が思わず目を逸らすほどの屈辱。そして絶望的なことに、定子の悲劇はまだ始まったばかりなのである。 閨の中で、帝が定子に縋るように、 「嫌いにならないでくれ。そなたがいなければ生きられぬ。傍にいてくれ」 道隆が第17話で「お前は帝の唯一無二の后。他の姫の入内を阻んでいる」と言っていたとおり、5年前に定子が入内して以来、関白の力によって一条帝には他の女御がいなかった。この5年間が、夫婦としてふたりきりの時間であったのだ。 しかし、道隆はもういない。定子が帝の愛を独占した年月が終わろうとしている。
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