若い人に習うのをやめたら、マジで終わるーー扱いの難しい「1.5列目」、清塚信也とDJ松永が仕事に命を懸ける理由
松永:最近は、以前より更に音楽を聴くようになりました。3、4カ月前に曲作りが異常なまでに楽し過ぎるというゾーンに入っていた時期があったんですよ。その頃は、今まであまり聴いてこなかったスタイルの音楽を聴きまくっていたんですけど、全部めちゃくちゃかっこいいと思ったんですよね。この「かっこいいと思える」ということがすごく尊くて。今後の自分が作ろうと思える音楽の幅が広がった、ということじゃないですか。 清塚:なるほど。 松永:あと、自分よりも若い子が作るものをかっこいいなって素直に思えることはすごくうれしくて。自分が意固地にならずに済んでいる。自分の手癖だけでやっていると絶対に小さくなってくるので。 清塚:すごくわかる。コロナ禍でYouTubeでもストリートピアノとかがすごく流行って。コンサートピアニストとしてホールで聴いたら技術的には不十分な人もいるんだけど、「だからなんだ?」という話なんだよ。その人たちに教えてくださいという立場で会いに行けば、ものすごく心を広く開いてくださる。若い人にいろいろ習っていかなきゃって、私も最近は特に考えてるよ。
松永:若い人に習うのをやめたら、マジで終わりますよね。 清塚:でもこれって、ブランドを持っている側にとっては、なかなか怖いことでもあるんだよね。「若い人と話したとき、ついていけなかったらどうしよう」って怖さもあるし。 松永:「謙虚に若い人の技術を吸収したうえで、なおかつ誰よりもうまくある」っていうのが理想ですよね。
一家の運命を懸け、1日10時間以上は練習していた
ふたりにとって、音楽との出会いは家族の影響も大きかった。一家の運命をすべてクラシック教育に懸けた母親のもとで、幼少期のほぼすべての時間をピアノに注いだ清塚。かたや松永は、学生時代に出会ったヒップホップとラジオが居場所のない学生生活のシェルターだったと振り返る。 松永:ヒップホップとクラシックって真逆のイメージすらありますよね。クラシック音楽は、そもそも生まれがよくて教育を受けていないと土俵にすら乗れないっていうイメージです。 清塚:確かにお金はかかる。うちの場合は母親が音楽の道に憧れがあったから、片親なのに、自分の夢をぜんぶ私と姉に注ぎ込んだ。お金が十分にあるわけじゃないけど、それでもやる。「あなたたちがプロになって家族を支えるんです。それができなかったら、もう全滅でいいです」って。一家の全滅を背負って、1日10時間以上は練習してたから。