若い人に習うのをやめたら、マジで終わるーー扱いの難しい「1.5列目」、清塚信也とDJ松永が仕事に命を懸ける理由
働き方や自己表現の手段が格段に増えた現代において、「好きなことを仕事にする」とはいったいどういう意味を持つのか? クラシックピアニストの清塚信也(39)と、自身のユニットCreepy Nutsやトラックメイカーとしての音楽活動で知られるDJ松永(31)。ともに音楽活動を軸にしながら、テレビやラジオなどへ自由に活動の領域を広げてきた。ふたりは、好きなことを仕事にする喜びと、同時にのしかかるプレッシャーをどう感じているのか。(取材・文:鈴木絵美里/撮影:西田優太/編集=伊藤 駿(ノオト)/Yahoo!ニュース オリジナル RED Chair編集部、文中敬称略)
トレンドに乗りすぎると廃れるのが早いし、自分を見失ってしまう
日本人男性クラシックピアニストとしては史上初の、日本武道館公演を2019年夏に開催した清塚信也。そして2020年11月、同じく武道館公演を2日間にわたり開催したCreepy NutsのDJ松永。ふたりの出会いは清塚がMCの音楽番組だが、その後も交流は続き、清塚は上述のCreepy Nutsによる武道館公演へも足を運んでいた。この日は、それ以来の再会となった。 清塚:武道館公演、すごくよかった。こんなご時世だからベタベタできないけど……本当だったら楽屋挨拶でディープキスしたかったよ。 松永:コロナ禍じゃなかったら、俺は楽屋でディープキスされてたんですか(笑)。 清塚:それぐらい愛おしくて。しかも松永くん、ステージで泣くんだもん。絶対に演出だと思ったんだけど、楽屋に帰ってもまだ泣いてるし。 松永:武道館っていう舞台は不思議で、立っているとこれまでの道のりを思い出しちゃったんですよね。清塚さんも武道館やってるじゃないですか? ピアニストで武道館に立った人って、けっこういるんですか? 清塚:あまりいないみたい。
松永:クラシックってホールでやるイメージなんですよ。 清塚:クラシックではPA(スピーカーやミキサー等の音響機材のこと)はNGで、生の音でやるのがルールだから。コンサートホールも2000人とか、大きくても3000人くらいのサイズが限界だと思う。 松永:じゃあ、そもそも武道館では成立しないですね。 清塚:本当はね。でも、別に「しきたりをぶっ壊してやろう」とか思って武道館コンサートをやったわけじゃないんだよね。 松永:俺も楽しくやらせてもらっているというだけで、「自分が作るもので世界をひっくり返そう」って思ったことは一度もないです。 清塚:松永くんは言ってみればもう、ディフェンディングチャンピオンの立場でしょ。まだ若いのに自分のブランドも守らなきゃいけないって、けっこう大変だよね。 松永:ヒップホップってユースカルチャーなので、レジェンド的なアーティストが殿堂入りせずに、ダサくなっていくんです。だから、いくつになっても、その時の10代にイケてると思われ続けないと駄目なんですよね。これが、とにかくハードなんです。 清塚:でもトレンドに乗りすぎると廃れるのが早いし、自分を見失ってしまうわけでしょ。