「極楽とんぼはどこかで終わると思ってる」ーー加藤浩次の意地、山本圭壱の覚悟
のんきに暮らしている人をからかって使う「極楽とんぼ」という言葉。しかし、このコンビ名をつけた2人の30年間は、決して「のんきな」ものではなかった。加藤浩次と山本圭壱によるお笑いコンビ「極楽とんぼ」は、数々の困難を乗り越え、一時はばらばらになりかけた2人を今なお結び続けている。現在、2人はどんな思いでこのコンビ名を背負っているのか。加藤さん、山本さん。極楽とんぼとは、なんですか?(取材・文:西澤千央/撮影:栃久保誠/編集=伊藤 駿(ノオト)/Yahoo!ニュース オリジナル RED Chair編集部、文中敬称略)
『スッキリ』に出てるのは「まともな」おじさん
「気恥ずかしいけどね。面と向かって話すのは」加藤が照れたように言う。山本は笑いながら「すみません、赤のソファに赤の服で」。今の自分を示した服装で……という要望に、加藤浩次はスーツ、山本圭壱は真っ赤なシャツに真っ赤なスニーカーでやって来た。まず聞いてみる。「極楽とんぼとは、なんですか?」 山本:極楽とんぼっていったら……私とあなたの顔を思い浮かべる人が多い、記号? 加藤:コンビ名だからね。俺は……正直わかんなくなってる。「帰る場所」とか「ホームグラウンド」とか言うのは簡単じゃん? 「婚姻関係のない夫婦」とか言うのも簡単だよね。極楽とんぼとしてやっている仕事もあるけど、それぞれ個人の仕事もある。山本さんは自分のYouTubeもやってる。 山本:でも俺は、1人でなにかやるときも、いちいち「極楽とんぼ」ってつけてる。『けいちょんチャンネル』じゃなく『極楽とんぼ山本圭壱のけいちょんチャンネル』だし。 加藤:俺、『スッキリ』(日本テレビ)は(極楽とんぼが)ついてないんだよなあ。 山本:『スッキリ』で「極楽とんぼ・加藤浩次」はおかしいでしょう。(笑)
加藤:うーん。……俺は、極楽とんぼとついた瞬間に、変わるんですよ。 山本:わかる。だって『スッキリ』に出てるのは私の知ってる加藤じゃない。おじさんがやってる。 加藤:(笑)。まともなおじさんだよね。 山本:そう、まともなおじさん。まともなおじさんが世の中のことを喋るし。偉い人とも、すげえ役者さんとも普通に喋るし。もとはそんな人じゃなかったじゃない。 加藤:「極楽とんぼとはなんですか」と聞かれたら……暴れるとか、人間の嫌なところとか、自分の「邪な部分」を出す場所だよね。人間っていろいろな面があるじゃん。思わずテレビ見て泣いちゃうような優しい部分とか、すごい冷酷な部分とか。人間みんないろいろな面があるけど、そのなかでも「人の邪な部分」が凝縮されているのが、「極楽とんぼの加藤浩次」な気がする。 山本:まさにそうだと思うよ。だって、俺といるときはいつも「極楽とんぼの加藤浩次」じゃん。「山本をこらしめてやろう」とか思っているじゃない。