日銀・黒田総裁会見10月29日(全文1)景気は持ち直している
日銀の黒田東彦総裁は金融政策決定会合後の29日午後、記者会見を行った。 ※【**** 00:35:30】などと記した部分は、判別できなかった箇所ですので、ご了承ください。タイムレコードは、「日銀・黒田総裁が会見 大規模な金融緩和策を維持(2020年10月29日)」に対応しております。 【動画】日銀・黒田総裁が会見 大規模な金融緩和策を維持(2020年10月29日) ◇ ◇
金融市場調節方針は現状維持
黒田:はい、本日の決定会合では長短金利操作、いわゆるイールドカーブ・コントロールの下での金融市場調節方針について、現状維持とすることを賛成多数で決定しました。すなわち、短期金利について日本銀行当座預金のうち政策金利残高にマイナス0.1%のマイナス金利を適用するとともに、長期金利については10年物国債金利を0%程度で推移するよう、上限を設けず必要な金額の長期国債の買い入れを行います。 また、長期国債以外の資産の買い入れ方針に関しても、現状維持とすることを全員一致で決定しました。ETFおよびJ-REITは当面年間約12兆円、年間約1800億円に相当する保有金額の増加ペースを上限に、積極的な買い入れを行います。CP等、社債等については2021年3月までの間、合わせて約20兆円の残高を上限として買い入れを行います。 本日は展望レポートを決定、公表いたしましたので、これに沿って経済・物価の現状と先行きについての見通しを、見方を説明いたします。
物価は小幅のマイナス
わが国の景気の現状については、内外における新型コロナウイルス感染症の影響から引き続き厳しい状態にあるが、経済活動が再開する下で持ち直していると判断しました。やや詳しく申し上げますと、海外経済は大きく落ち込んだ状態から持ち直しています。そうした下で、輸出や鉱工業生産は増加しています。一方、企業収益の悪化を背景に設備投資は減少傾向にあります。雇用、所属環境を見ると感染症の影響が続く中で弱い動きが見られています。個人消費は飲食、宿泊などのサービス消費は依然として低水準となっていますが、全体として徐々に持ち直しています。この間、企業の業況感は大幅に悪化したあと、幾分改善しています。金融環境については全体として緩和した状態にありますが、企業の資金繰りに厳しさが見られるなど、企業金融面で緩和度合いが低下した状態となっています。 先行きについては経済活動が再開し、新型コロナウイルス感染症の影響が徐々に和らいでいる下で、緩和的な金融環境や政府の経済政策の効果にも支えられて、改善基調をたどるとみられます。もっとも、感染症への警戒感が残る中で、そのペースは緩やかなものにとどまると考えられます。その後、世界的に感染症の影響が収束していけば、海外経済が着実な成長経路に復していく下で、わが国経済はさらに改善を続けると予想されます。 次に物価ですが、生鮮食品を除いた消費者物価の前年比を見ますと、感染症や既往の原油価格下落、Go To トラベル事業の影響などにより、小幅のマイナスとなっています。予想物価上昇率は弱含んでいます。先行きについては消費者物価の前年比は当面感染症や既往の原油価格下落、Go To トラベル事業の影響などを受けて、マイナスで推移するとみられます。その後、経済の改善に伴い、物価への下押し圧力は次第に減衰していくことや、原油価格下落の影響などが剥落していくことから、消費者物価の前年比はプラスに転じていき、徐々に上昇率を高めていくと考えられます。予想物価上昇率も再び高まっていくとみられます。 前回の見通しと比べますと、成長率についてはサービス需要の回復の遅れを主因に2020年度は下振れていますが、2021年度は幾分上振れています。また、2022年度はおおむね不変となっています。物価についてはおおむね不変です。ただし、こうした先行きの見通しは感染症の帰趨やそれが内外経済に与える影響の大きさによって変わりうるため、不透明感が極めて強いと考えています。