「40年ルール」見直しで再稼働する老朽原発――危険性はないのか?自治体の困惑と期待
原発が立地する他の自治体も構図は同じだ。福井県では若狭湾沿岸に計15基の原発が存在し、「原発銀座」と呼ばれる。そのうち7基は廃炉が決まったが、高浜1、2号機は美浜3号機と同様40年の運転期間を延長し、再稼働する予定だ。最近では、新増設やリプレースへの期待が高まっているという。 「政府が最近、新増設を言い出したことで、地元自治体は浮かれていますよ。新増設に関しては既に町議会として国に要望書を出しています。ですから、政府の方針が決まれば、すんなり増設となるでしょう。私たちの立場としてはたまったものではないですが……」
「危険な原発はすでに廃炉」という指摘
若狭湾南岸のおおい町に立つ大飯原発。そこで6年間所長を務め、現在は技術者の派遣会社を営む肥田善雄さん(72)は「危険性のある原発はすでに廃炉になっている」として、40年ルールは撤廃するべきだという立場だ。たとえば、大飯原発1号機(運転開始1979年)、2号機(同)は2017年に廃炉が決定しているが、それには理由があったと言う。 「原子炉を最終的に冷やす上で海水をポンプで汲み上げることが大事ですが、大飯原発1、2号機ではそれが2系統ありました。一つはバックアップです。ただ、大飯では1、2号機で共用になっている部分があった。それを一から直すとコストがすごくかかり、仮に延長して20年動かしても取り返せない。それで廃炉にしたんです。美浜の1、2号機も同じ事情です。事業者はそのくらい一生懸命やっていて、危険性の高いものは廃炉にしているんです」 その上で、リプレースも必要だと語る。それは建設という技術的問題、そして運転員という人材の問題も関係しているという。 「定期検査などの作業員は現状まだ十分確保できる状況にあるでしょう。ただ、問題はプラントの建設です。新設をやったことのある経験者がほとんどいません。今から経験者を確保して、若手を教育していけばまだ間に合うでしょうが、5年も先になると技術の継承はもう難しいでしょう」