「40年ルール」見直しで再稼働する老朽原発――危険性はないのか?自治体の困惑と期待
一方で、現在主力の火力発電を広げるわけにもいかない。菅義偉前首相は2050年までのカーボンニュートラルの実現を国際公約に掲げており、温室効果ガスを増やすことは避けたい。再生エネルギーの主力たる洋上風力発電の普及には時間がかかる。こうした事情から、「原発再稼働による電力確保」となった。 政府が昨年10月に閣議決定した第6次エネルギー基本計画では、2030年の電源構成における原発の割合は「20~22%」となっている。だが、現状では6%程度で、すでに24基の原発の廃炉が決定している。今後は40年ルールを撤廃し、廃炉の対象ではない老朽原発の稼働をさらに続けることになりそうだ。 そうした中、新たな手段に挙げられるのが新増設やリプレース(建て替え)である。前出の橘川さんは特にリプレースが必要だと語る。 「私は反対派でも推進派でもありません。原発を減らしていくのだとしても、将来的にある時期まで原発を使っていくのであれば、危険性を最小化しないといけません。そのためには古い炉ではなくて新しい炉のほうが危険性は小さくなるというのは当たり前のことだと思います。原発はどうあがいても最後は危険なものです。だから『安全性』ではなく『危険性の最小化』を考えるべきなんです」 その点で、岸田政権の姿勢に疑問を感じるという。第6次エネルギー基本計画で、リプレースを入れていなかったためだ。 「(今冬に)9基動かすと言ったのも、もともと来年動かす予定のものを言っただけです。このままリプレースはせずに、古い原発の運転延長をするのが狙いでしょうか。安全性から考えると非常に筋が悪い政策です」
政府の原発政策はどこへ向かうのか
美浜町議の河本猛さん(44)は原発反対の立場で活動をしているが、最近は地元の空気の変化を感じている。反対運動は福島原発の事故直後こそ活気があったが、いまや下火になっているという。それは地元経済にとって原発の存在があまりにも大きいからだ。 「美浜3号機は2700億円かけて高経年化対策などの工事をしました。それが完了して資産価値が上がったことで、関西電力が美浜町に払う固定資産税が大幅に増えた。議会で『今年度の当初予算のうち何%の税収が関電関連か』と聞くと70%を超えていました。1社だけでこれほどの税収になるというのは地方自治体にとって他には代えがたいものでしょう」