廃炉にロボットで貢献できるか――福島高専の挑戦と、若き学生たちの思い #知り続ける
福島第一原発の廃炉をテーマにロボットを製作し、その技術力などを競う「廃炉創造ロボコン」。昨年の大会で最優秀賞を受賞したのは、地元の福島工業高等専門学校だった。同校では東日本大震災後、廃炉や放射線、原子力に関する講義が増え、関心をもつ生徒の入学が絶えない。最長で40年とも言われる廃炉作業にどこまで貢献していけるのか。学校の取り組みや学生たちの思いに迫った。(サイエンスジャーナリスト・緑慎也/Yahoo!ニュース オリジナル 特集編集部)
震災から10年で最優秀賞
真っ暗なトンネルから「メヒカリ」が姿をあらわす。ラジコンカーを前後に長く伸ばしたような車型ロボットだ。メヒカリは溝にはまることもなく、正確に正方形の穴へ移動。その後、胴体部分から子機が分離され、穴の下に降りていった──。 「廃炉創造ロボコン」での一コマだ。廃炉創造ロボコンとは、福島第一原発の廃炉作業をテーマに、高専の学生たちがロボット技術を競い合うコンテスト。2021年1月に第5回がオンライン開催され、全国から14チームが参加した。 大会では、格納容器の底に溶け落ちた燃料デブリの取り出しを想定し、4メートルのパイプを通った先で、デブリを模した物体を回収し、元の地点へ戻るという課題が出された。制限時間10分で、ロボットのスムーズな移動とデブリの効率的な回収が求められる。
最優秀の文部科学大臣賞を受賞したのが福島高専のメヒカリだった。製作者は同校のロボット技術研究会に所属する3人。「いわき市名産で『市の魚』に制定されているメヒカリをロボット名にした」と話すのは、設計担当で機械システム工学科5年の鳥羽広葉さんだ。 「深海を泳ぐメヒカリのように、パイプの中を通り抜けてほしいという思いから名づけました。苦労したのは、ロボットが直径24センチの狭いパイプを通れるように、モーターを車輪の中に収めなければならなかったことでした」 閉会式で、萩生田光一文部科学大臣(当時)は「(東日本大)震災後10年の節目の年に、地元福島の高専が初めて最優秀賞を受賞したことは大変意義深い」と祝福の言葉を寄せた。