「40年ルール」見直しで再稼働する老朽原発――危険性はないのか?自治体の困惑と期待
この「中性子照射脆化」に関して、原発事業者はデータを解析し、安全性を確認しているとしている。ただし、小島さんは情報公開が十分ではないと語る。 「関西電力は原データを公表していない。原データを提供してもらえれば、それを分析して安全性を確認できる。ただ、裁判の過程で明らかになったのは、原子力規制委員会も審査の中で関電に十分な原データを出させていないということ。それでは規制委は原発の審査をちゃんとできていないのではないかと不信感につながっている」 また、原発に張り巡らされる電気ケーブルについても劣化が懸念されると小島さんは言う。 「ケーブルは、原発1基当たり1000~2000㎞に及んで設置されています。本来は火災のリスクから全て難燃性ケーブルに取り替えなければいけませんが、実際には複数のケーブルを防火シートでくるんだだけでよしとしてしまっているものもあります」 かつて、関西電力の社員として美浜原発で作業をしていた元美浜町議の山崎俊太郎さん(83)は、安全対策に万全を期していても「絶対に安全」とは言えないと語る。 「蒸気発生器や配管などは交換しているので、そういうところは問題ないでしょう。しかし、原子炉容器は交換できません。他にも交換できない部品はある」
山崎さんにとって印象深いのは、2004年8月に発生した美浜原発3号機の事故だという。タービン建屋で配管が破裂し、約140℃の熱水と蒸気が噴出。5人が死亡し、6人が重傷を負う大事故だった。 「3号機の事故現場も見ましたが、配管が薄くなっていました。圧力がかかり摩耗して薄くなっていたので破裂してしまったんです。そういうところは全て検査したからといっても100%完璧にはできない。老朽原発では『確実に安全』ということはなく、どこに盲点があるかわからないのです」
リプレースの必要性
このように危険性が指摘される老朽原発だが、今後も再稼働が進められる。国内の原発はこれまで再稼働した10基に加え、来年夏以降に7基と再稼働ラッシュだ。その中には運転開始から48年になる高浜原発1号機、47年になる同2号機も含まれており、来年6~7月ごろの再稼働を予定している。 こうした再稼働の背景にあるのが、近年の電力需給の逼迫である。 今年3月、経産省は初めて電力需給逼迫警報を発令し、7~9月には政府が全国規模で節電を要請した。また、今年はロシアによるウクライナ侵攻もあり、天然ガスなどエネルギーの確保にも黄信号が灯ることになった。