JBC「解散」でボクシング界はどうなるのか…厳しい再建の道
一連の裁判は、永田理事長が着任前の案件であり責任を認めたくなかったのかもしれないが、井岡一翔のドーピング検査に関する不手際や、寺地拳四朗(BMB)と矢吹正道(緑)のWBC世界ライトフライ級王座のダイレクトリマッチに関する対応ミスなど、数々の問題を起こし、これまでもコンプライアンスやガバナンスの不備を指摘されてきた。日本プロボクシング協会からも責任を追及されてきたが、ゼロ回答を繰り返し、何かあれば弁護士任せでJBCの主体性やビジョンをしっかりと持てなかったツケが「解散」という形で回ってきたのだ。 しかも、2月の亀田裁判の判決前の理事会で財団法人の「解散」の承認を得ていたにもかかわらず、ここまで広報もせず、3月14日に社団法人として「JBC」を登記したことも、この日、会見で質問されるまで明かさなかった。組織が硬直化しているのだ。 では、これからのボクシング界はどうなるのか。JBCの今後は?そしてJBCが解散した状況で試合はできるのか。4月9日には、WBA世界ミドル級スーパー王者、村田諒太(帝拳)とIBF同級王者のゲンナジ―・ゴロフキン(カザフスタン)との“世紀の一戦”が控えており、ゴロフキンは、この日、来日した。 世界戦の成立のためにはローカルコミッションの認定が必須となる。 永田理事長は、「試合は止めない。清算法人であってもこれまで請け負ってきた通常業務はやってかまわないという文言が(法人法に)入っている。これは弁護士とも相談してやっていること」と説明した。 清算事業は「結了まで1年」(永田理事長)の猶予があるため、その間のJBCの試合の統括、管理業務の継続は可能だという。だが、清算法人は「本来の目的は継続できない」と定められており、試合の統括、管理業務を継続することは厳密に言えば法に抵触することになる。まして、ここから先の新しい試合については、永田理事長も「微妙」と語っており、JBCが管理、運営を続けることに支障が出る可能性もある。なにかしらの問題が発生した場合、JBCが倫理委員会などを開き、懲罰を決定していたが、理事が総退陣した状況では、その機能も失われてしまったことになる。 またJBCの口座はすでに裁判所に差し押さえられており、成富事務局長は、「振込はできる」と説明したが、今後は、試合を管理、運営をするための経費を確保することも難しくなる。口座を使わずに現金でやりとりをした場合、強制執行妨害の罪に問われる可能性さえあるのだ。 ただJBCが業務執行ができなくなった場合も、日本プロボクシング協会は、財政破綻に備えて、独自で試合を管理、運営するための準備委員会を立ちあげており、試合がストップするという最悪の事態は避けられるものと考えられる。WBA、WBCなど主要4団体は、JBCではなく、実際はプロモーターとの信頼関係で世界戦を認定しているという現実もある。 そして、さらに重要なJBCの今後についてだが、永田理事長は、「スポンサー企業を探し、協会の協力を得ながら再建策を構築して財団を復活したい」と明かした。財団法人法によると300万円の純資産を戻すことができれば「解散」した財団法人を復活させることができる。だが、亀田裁判の負債や借り入れ金などを含めると2億円程度の経済的支援が必要で見通しは厳しい。 「一生懸命やっている最中。複数(の企業に)打診しているところ」と永田理事長は説明したが、現段階で脈のある有力スポンサーは見つかっていない。