JBC「解散」でボクシング界はどうなるのか…厳しい再建の道
日本のプロボクシングを統括管理している一般財団法人日本ボクシングコミッション(JBC)の評議委員会、理事会が31日、都内で行われ、財政難による解散が決定した。「一般社団法人及び一般財団法人法」によれば「純資産額が2期連続して300万円を下回った場合」には解散しなければならないと定められており、永田有平理事長の説明によると「コロナ禍による試合数の激減」で財政が破綻、解散を余儀なくされることになったという。実際は、亀田裁判の敗訴による約1億円の賠償金の支払いの打撃が決定打となったが、永田理事長は、それを認めなかった。 また解散に伴い、JBCの永田理事長以下、現在の理事は全員退任することになった。今後は再建策を示した上で資金面での支援者を探し、ジム経営者による親睦団体である日本プロボクシング協会の協力を仰ぎ財団法人の復活を目指す方針だが、その見通しは厳しく、最悪の場合に備え社団法人を立ち上げていることも明らかになった。永田理事長が代表清算人となり清算作業が進められていく中で、現在予定されている試合についての管理、運営は継続し「試合は止めない」とも明言したが、清算法人の通常業務の継続は法律に抵触するため、今後、新たに発生する試合の管理、運営に支障が出る可能性も出てきた。4階級制覇王者の井岡一翔(志成)のドーピング検査に関する不手際など、多くの問題を抱えてきたJBCは、最後にその長い歴史に汚点を残す最悪の結末を迎えた。
亀田裁判の敗訴が決定打となって財政破綻
プロボクシング界の“法の番人”であるJBCが、事実上、潰れた。2期連続の赤字決算が、財団法人法に触れ「解散」を余儀なくされたものだが、300万程度の純資産が確保できないほどの財政破綻に追い込まれたのが、その理由だ。日本初の世界王者となった白井義男氏が、日本で世界タイトル戦を行う際に、ローカルコミッションが必要となり1952年に設立された伝統と歴史のある組織が、なぜ「解散」することになったのか。 永田理事長は「コロナの影響により試合が激減した。現状、ボクサーも減っている。審判の派遣や、選手の安全管理などの業務を商売としてやっていないので赤字は仕方がないと思っていたが、この2年の赤字は相当ひどくて財務が耐えられなかった」と説明した。 プロボクシングの試合承認料やライセンス料などが主な財源であるJBCにおいて、新型コロナの影響による試合数の激減は確かに痛かったのかもしれないが、2010年度に約1億6000万円あったJBCの正味財産(純資産)は、この12年で恐るべきペースで目減りしていた。前年度の決算では、約2500万円の債務超過になり、今年度の決算も約2600万円の債務超過となったが、新型コロナの影響が主たる原因ではない。一連の裁判の敗訴費用が重くのしかかったのである。 JBC職員の不当解雇を巡る裁判では最高裁までいって敗訴し、現在3150ファイトクラブ会長の亀田興毅氏らが約6億6000万円の損害賠償を求めた訴訟でも一審、二審で敗訴。JBCの見込み違いで控訴したため一審で約4500万円だった賠償額が約1億円に増額し最高裁への上告を断念した。永田理事長は、「亀田裁判は今期の清算」だとして一連の裁判を財政破綻の理由として認めなかった。組織を破綻させた責任をどう取るのか?と問うと「亀田裁判の敗訴で1億10万円の賠償金を支払う結果となって責任は感じているが、清算法人をやることと新しい財団復活に向けて努力しようと決意した」と答えた。 組織のトップが迷走した責任も取らず正しく総括もできないことがJBCが「解散」することになった理由のひとつなのかもしれない。この日の「解散」により、永田理事長以下、全理事が退任となったが、それで責任を取ったとは言えないだろう。