さかなクンのような子に入学してほしい! ~自律学習で先頭を走る横浜創英の挑戦~【後編】
前編では横浜創英中学校・高等学校(以下、横浜創英)の、学びの変化に向けた取り組みについて記してきました。建学の精神の実現のために《自律》《対話》《創造》という3つのコンピテンシーと9つのスキル*¹を、すべての教育活動を通して育てていくとのことでした。後編である今回は、世界の教育の方向性はどうなっているのかを見てみましょう。(寺田拓司:東京個別指導学院 進路指導担当)*¹ コンピテンシー:仕事で成果を出す人に共通する行動特性のこと。9つのスキル:3つのコンピテンシーを会得するために、卒業までに生徒に身につけてもらいたい具体的な力。※この記事は2024年7月時点の情報をもとにしています。最新の情報は、学校等にご確認ください。 【グラフ】今の大学入試は「一般選抜」が少数派? 国公立・私立別の割合を見てみる
世界(OECD)の教育の動き
OECD(経済協力開発機構)は「Education2030プロジェクト」で、生徒が2030年以降も活躍するために必要なコンピテンシーを提示しています。「The OECD Learning Framework 2030」で示された図の中核に位置するのが「生徒エージェンシー」(Student Agency)です。複雑で不確かな世界を歩んでいく力を持つために、生徒が自分の学習を自律的に進める能力が強調されています。 「生徒エージェンシー」とは、自分の人生や周りの世界に対してポジティブな変革を起こしたいと考えたとき、働きかけられるというよりも自らが働きかけることであり、型にはめ込まれるというよりも自ら型を作ること、また他人の判断や選択に左右されるというよりも責任を持った判断や選択を行うことを指しています(「OECD Future of Education and Skills 2030」より)。 エージェンシーの考えでは、何を学ぶのか、どのように学ぶのかについても自分自身が決定し、積極的かつ責任感を持って、社会や周囲の人々、事象に関わることが求められているのです。 「The OECD Learning Framework 2030」に続いてOECDは、2019年に「OECD ラーニング・コンパス(学びの羅針盤)2030」を公表しました。ラーニング・コンパスは、「2030年以降も活躍するために必要なコンピテンシーの種類に関する幅広いビジョン」と言えるものです。 これを見ると、知識、スキル、態度、価値から構成されるコンピテンシーに加え、変革を起こす力のあるコンピテンシーも考慮されています。これらの力を「見通し:Anticipation、行動:Action、振り返り:Reflection」(AAR)という、連続した学習サイクルを通じて身につけることが重視されています。 AARとはAnticipation:見通しを持って目標を設定する Action:アクションを起こす Reflection:振り返る 予測困難で先行き不透明な激動の時代(VUCAの時代)、子どもたちには答えのない課題に立ち向かう力が必要とされています。答えがない課題に立ち向かうには、まずは見通しを立て、試行錯誤しながら、目標に向かって柔軟に修正・改善を繰り返すことが重要です。このようなAARサイクルの思考や体験を繰り返すことで、これからの時代に求められる資質・能力、自分の学びをコントロールする自己調整力を高めることができます。 前編で紹介した横浜創英が進める教育改革は、OECDが重視している力と同じ方向性と言えます。しかもそれを、同校は国内でいち早く実現しようとしているように思います。