さかなクンのような子に入学してほしい! ~自律学習で先頭を走る横浜創英の挑戦~【後編】
学校説明会でも表れる横浜創英の教育方針
今回のコラム執筆にあたり、横浜創英の学校説明会に出席してみました。司会は中学1年生と2年生。参加者の誘導、学校見学や質問の応対も有志の生徒たちが行っています。先生方は見守っていますが、心配そうに見ているというより、生徒を信頼して「任せている」という印象を受けました。 本間朋弘校長は「入学式も運動会も生徒が運営している」と話します。生徒自身の主体性を育てながら、学びや学校運営を生徒主体に委譲している一端がうかがえます。自分が通う学校の良さを小学生やその保護者に伝える経験や、自分が探究している内容を発表する経験には、学校外の人々との接点を増やし、社会とつながることを目標としている同校の教育方針が見て取れます。 また、校長や副校長のパートでは、出席している小学生に問いかける場面もありました。エンパシー(Empathy:自分とは異なる価値観や考え方を持つ他人に自己を投影し、相手が何を考えているのか、どう感じているのかを想像する力)に関する事例を挙げて、小学生に1分間考えさせ、考えたことを自分の保護者に話すというものです。 同校の建学の精神「『考えて行動のできる人』の育成」にあるように、「自分で考えて判断して、表現してごらんなさい」というメッセージが込められているように感じました。
良い学校とは、人それぞれ
2024年の春、横浜創英よりも難関大学への合格数が多い学校や、中学受験偏差値がより高い学校は山ほどあります。本間朋弘校長と山本崇雄副校長は、ともに神奈川県や東京都の公立進学校で教壇に立たれていた先生ですので、もし大学合格実績を上げることを「最上位目標」とすれば、実現できそうな方々です。 しかし、「子どもの価値を偏差値で決めていく日本の受験制度は、まあそう長くはもたないだろう。正解のない時代だからこそ自分は何が強みなのか、何を実践したいのか、そして社会にどう貢献していくのか。そのことを発見できる教育環境を作り、日本の教育を変えるモデルになれないか」との思いで学校改革を行っているそうです。「社会が変わらなければ学校は変わらないと大人は言いますが、学校を変えることで社会を変えていきたい」と本間校長は語っていました。 2024年6月の学校説明会は受付開始後、数日で満席になったそうです。参加者は熱心に聞き入っており、横浜創英への関心の高さがうかがえます。自分でやりたいことを見つけて、自分で考え、目標に向かって挑戦したいような子どもにとっては、非常に楽しく魅力的な学校であることは間違いありません。一方で、先生に言われた通りに覚えて、与えられた宿題をこなすといった学習に慣れてしまっている子どもにとっては、大変居心地が悪い学校のようにも思います。 保護者の考え方はさまざまです。子どもが試行錯誤をしながら学ぶのは、大学受験勉強においては効率が悪いと考える保護者もいるでしょう。状況を把握し、見通しを立てて、必要な行動を起こし、振り返るようなことは、今のわが子にはできそうにないと考える保護者もいるでしょう。確かに将来必要なスキルではあるが、有名大学の合格につながるかはわからないと考える保護者もいるでしょう。 「良い学校」選びに正解はひとつではありませんし、「良い学校」というのも、それぞれの子どもによって異なります。だからこそ中学受験では、子ども本人が通いたい学校であると同時に、保護者が通わせたいと思える学校を選ぶことが大切です。
寺田拓司