円安下の海外留学「脱米国」の動き “日本は縮小傾向”変わる親の意識 #生活危機
2022年に加速した円安は、海外留学を志す学生たちも直撃した。激しいインフレが続く米国では、為替変動で仕送り金額が目減りする中、食料配布に並ぶ日本人学生もいる。そんななかで留学動向にさまざまな変化が出始めている。米国以外の国を目指す学生もいれば、米国にこだわる場合でも期間や行き先を見直す学生もいる。インフレと円安に苦しむ留学生の事情を取材した。(文・写真/サイエンスジャーナリスト・緑慎也/Yahoo!ニュース オリジナル 特集編集部)
食料品配布の列に並ぶ日本人留学生の姿
「普段は自炊していますが、友人との付き合いもあるので、週3回くらい外食に行きます。軽く食べても15ドルくらい。日本円に換算したら、1ドル130円で約2000円でびっくりしますよ」 リモートの画面越しに語るのは、東北大学農学部4年の坂井悠楽さん。2022年1月からフードバンクについて学ぶため、米国のカリフォルニア大学デービス校へ留学中だ。高校時代にファストフード店でアルバイトをしたとき、大量に捨てられるフライドポテトを見てショックを受け、フードロスに興味を持った。 現地のフードバンクでボランティアとして活動し、大学のキャンパスでも食料品を配っているが、思わぬ形で円安の“影”に気づかされたという。 「夏休み以降、その配布の場に、それまで目にしなかった日本人留学生を見かけるようになりました。1日70人のうち5人くらい。円安の影響だと思いますね」 同じく米国の中西部にあるイリノイ大学アーバナ・シャンペーン校に留学中の山形大学大学院博士課程2年の原田祐弥さんは、円安だけでなく、米国内で進むインフレも相当厳しいと話す。 「1カ月単位で急激に値上げが進んでいるのを肌で感じます。6月に39ドルで乗った長距離バスの運賃が9月には49ドルでした。3カ月で25.6%の上昇です」
そんな米国で生活をするには、日本円から米ドルへの振替や海外送金が必要だが、原田さんはドル円の為替レートで円が高いタイミングを狙って米国の銀行に入金するようにしている。 「昨年10月の送金では日本の30万円が、米国では2000ドルにしかならず(当時1ドル約150円)、かなり目減りしていました。ただ、毎日レートを確認していると、お金にばかりナーバスになるので最近はあまり見ていません。せっかくの留学期間にお金の問題で自分の行動に制限をかけたくないからです」 坂井さんも原田さんも、1年以内に帰国する予定だ。だが数年単位の長期留学、特に4年制大学で単位取得を目指す留学生はさらに円相場の影響を受けやすい。 こうした留学生、そしてこれから留学を希望する学生たちはどう対応しようとしているのか。