円安下の海外留学「脱米国」の動き “日本は縮小傾向”変わる親の意識 #生活危機
インフレ、学費高騰、円安…厳しい米国留学
2020年度に海外へ渡った日本人留学生の数は1487人で、実に前年度比98.6%減まで落ち込んだ。新型コロナウイルスの影響だった。2年後の2022年度には各国の入国規制などが緩和・撤廃され、日本人留学生の数も増加に転じる様相を見せていた。そんな中で押し寄せてきたのが円安だ。3月頃からじわじわ進み、10月には一時1ドル150円台を記録した。
留学をめぐる状況に最近「異変」が起きていると語るのは、全研本社株式会社の取締役、上奥由和さんだ。同社は子会社に、米国の大学300校と提携し、主に日本の高校からの留学を仲介している一般財団法人海外留学推進協会(SAA)を持つ。上奥さんによれば、米国の大学に翌年の留学を希望する場合、例年9~11月に申込書を出すが、2022年は例年の3分の1程度しかなかったという。 「3月頃までに申し込めば間に合いますが、例年より決断のタイミングが遅れ気味です。相談件数はいつも通りなので、留学希望者が減ったわけではありません。円相場の状況を見ながら、決断を先送りしているのでしょう」
2023年1月時点で、円はやや持ち直しつつある。昨年12月に日銀が長期金利の変動幅の上限を0.5%程度に引き上げ、今後さらに金融緩和が修正されるのではとの観測から円高が進んだためだ。ただし、円安トレンドは当面続くと見られている。それに加えて、米国ではインフレによる物価高が続いている。 もとより米国は大学の学費高騰が深刻で、年間授業料が毎年3~5%のペースで上昇し続けてきたと上奥さんは指摘する。 「私が二十数年前にカリフォルニアにいたころのカリフォルニア大学ロサンゼルス校の1学年の学費は1万2000ドルでしたが、現在は4万ドル(1ドル130円で約520万円)を超え、3倍以上値上がりしました。ハーバード大学などはほぼ5万7000ドル(同約740万円)で、アメリカ人にとっても厳しい金額です」 日本から米国の大学への進学者は、2019年度まで2万人弱で推移してきた。上奥さんは、米国への留学者が増えない背景には、様変わりした日本の経済事情があると見ている。 OECD(経済協力開発機構)によると、平均賃金は1990年から2021年までの間、米国は53.2%と1.5倍以上増えたが、日本では6.3%しか増えていない。実質賃金で見ると、日本はいまや米国の約半分とされる。