「日本企業の成果主義、なぜ失敗ばかりなの?」 経営学者の回答は
富士通をはじめとする、著名な日本企業で導入されてきた成果主義。もてはやされていたのもつかの間、その多くは「失敗」に終わってしまう。成果を報酬に直結させる、という評価制度は仕組みとしてわかりやすく、良さそうなものに思える。それが、実際にはなぜうまく機能しなかったのか。成果主義の定義から始め、様々な方向からその原因を探ろうとする『経営学の技法 ふだん使いの三つの思考』(舟津昌平著)から、抜粋・再構成してお届けする。連載第2回。 【関連画像】 ●成果主義って何なんですか? そもそも成果主義って何なのか、という問題がある。まさに素人質問である。「成果主義って、何なんですか?」。いやそんなの、言わなくてもわかるじゃない。成果と賃金を連動させることですよ、と思うかもしれない。 では、成果とは何か。いや、成果は成果じゃん。プロ野球選手とかを考えてみたら、成績が良かったら年俸上がるし、ダメだったら下がるでしょ。と、思われたかもしれない。でも、ふつうの会社員は、野球選手のように数字としてはっきり成績が出るとは限らない。仕事をしている方は、自分の仕事の「成果」がいかに明示可能か、考えてみてほしい。 …というように色々考えて成果主義を設計していくと、きっと気付くはずだ。成果主義、細かいことまで考えるの、けっこうめんどくさいな…と。成果ってそんなに簡単に数値化できない場合もありそうだし、人や場合による、としか言えないことも多そうだ。 成果主義を導入した企業として知られる富士通のケースでも、社内では成果主義のことをあくまでも「目標管理制度」と呼んでいたことは見逃せない。主題となったのは「上司と相談して目標を管理するという制度」であって、ということは実際の問題は成果を出すどうこうよりも、上司との関係の方がより核心的な問題だった可能性もある。上司との関係がよりうまくいっていれば、目標管理制度の失敗はなかったかもしれないのだ。 実は成果主義は多義的であり、たった一つの意味に捉えることが難しい制度である。成果主義と言ったときに、意味するものが単一でないのだ。より正確には、成果と報酬を連動させるという大枠の定義は同じでも、成果の定義と測定、報酬との連動度などの根本的な設計には、部署や業種、会社の既存の制度などが影響するため、現実的な運用実態は会社によって異なる可能性が高いのである。