なぜ阪神の揚塩球団社長は電撃辞任したのか…背景に阪急阪神HDトップへの”忖度”
タイガースの親会社である阪神電鉄が村上ファンドに買収を仕掛けられ、”ホワイトナイト”として登場した阪急HDが経営を統合したのが2006年。その際、NPBへの30億円の加盟料を巡ってのドタバタ劇があったことから、当初「タイガースの経営は阪神が行う」との原則がHD内にありタイガースは“聖域”だった。しかし、阪急阪神HDの役員から阪神側の人間が一人減り、二人減りし、人事交流も盛んになり、徐々にグループの“阪急化“が進められたことに伴い、タイガースも”聖域“ではなくなってきた。 これまでは、阪神電鉄の会長、すなわちタイガースの最高トップであるオーナーは、そのHD役員のメンバーに入ってきたが、この6月、ついに藤原崇起オーナーが、HDの役員から外れたのである。 これまで、1億円を超える大型補強や監督人事など規模の大きいタイガースの案件については、角CEO、杉山健博・阪急電鉄社長ら阪急サイドの合意を得なければならず、”阪急化“が進むにつれ、タイガースは、阪急の意向を汲み取り”忖度”する機会が目立ってはいた。 2年前に一度は、続投が決定していた金本監督が”電撃解任“され、矢野監督に交代した際にも、阪急の意向を受けての”忖度”があったとされる。 それでも昨年までは、角CEO、杉山阪急電鉄社長、秦雅夫阪神電鉄社長、藤原オーナーの4人が、HDの取締役に名を連ね、合議制の形が保たれていた。しかし藤原オーナーが、そこから外れたことでパワーバランスは完全に崩れた。これまでタイガースについて意見することを控えていた角CEOが、今回、メディアに口を開いた理由も、そのバランスの崩壊と無関係ではない。つまり以前から辞任を申し出ていた揚塩社長に藤原オーナーが”詰め腹“を切らせた背景には経営主導権を持つ阪急グループへの”忖度”があったと考えられる。阪神の官僚的な組織体質がそうさせたとも言える。 揚塩社長が言う「混乱の収拾」の混乱とは、角CEOの「ケジメ発言」の行方を関西のマスコミにさらに追いかけられる状況を示唆しているのだろう。