タイガースの近未来を左右しかねない衝撃人事…阪急阪神HDの株主総会で何が起こったのか?
阪急阪神ホールディングス(HD)株式会社の第182回定時株主総会が17日、大阪北区の梅田芸術劇場で行われ、毎度、お馴染み、“モノ言う株主”から阪神タイガースへの質問が3つも飛び出し、中には新型コロナウイルスに感染した藤浪晋太郎(26)らに対する球団の管理不足を指摘するものもあった。阪神電鉄の百北幸司常務取締役が謝罪したが、今回の株主総会での注目点は、もう一つあった。藤原崇起オーナー(68)が阪急阪神HDの取締役を退任することが正式決定したのだ。この衝撃人事は一体何を意味するのか。
藤浪の新型コロナ感染は「周りがチヤホヤしすぎ」
新型コロナ禍の株主総会は厳戒態勢のもと開催された。受付ではサーモグラフィーによる検温と消毒。会場はソーシャルディスタンスを守るために使用禁止の席が作られ、3150人が参加した昨年に比べ出席した株主は10分の1程度だった。事前に来場を避けネットによる議決権行使を呼びかけたこともあるが、来場者への回数券配布のサービスをやめたことも影響したのだろう。議長の角和夫CEOが宣言して議事進行も簡素化。新型コロナが、電鉄やホテルだけでなく、タイガース、宝塚歌劇などのエンターテイメント事業をも直撃、約150億円をこえる損失が営業損益に出たことを伝える総会は、重々しい空気だったが、質疑応答では総会名物ともいえるタイガース関連の質問が自粛されることはなかった。 まず最初に中年男性の株主が、球界初の新型コロナ感染者を出したことに対し球団の管理不足を指摘した。 「藤浪君がいちびったことをやってしもた。役員の皆さん、お客さんや株主がみんな頑張っている中、自制できなかったのかな。でも藤浪君は悪くない。周りがチヤホヤしすぎ。虎風荘に入れといたらそんなこともなく。タクシーの運転手さんも言うてます。『背高いから目立つんや』と」 藤浪ら3選手は自粛を求められていた3月に大阪市内での会食に参加した。そこが感染源かは不明だが、その場にいた複数の20代女性も陽性反応を示した。藤浪は、その後、遅刻で2軍落ち。度重なる不祥事に球団が定めている「高卒新人は5年以上」より1年早く「虎風荘」を特例で退寮させていた過去までが問題とされていた。この株主が指摘したのも、その点。 答弁に立った百北常務取締役は、最初に謝罪。 「当時、遠征先、ホームエリアでの外出禁止を定めている球団は(阪神以外にも)ございませんでしたが、プロ野球人、社会人としての自覚を強く促しより厳しく行動措置を講じるべきではなかったのかなと思います」と続けた。 また藤浪らの反省の姿勢や濃厚接触者の情報を開示しなかった理由についても説明した。 ”モノ言う株主”は、「(昨年のドラフトで)高卒の子をいっぱい取った。大事に育てて欲しい」という要望も出した。 高卒の有望株を5人も指名した大胆なドラフトは評価を受けたが、その後が心配のようで、百北常務取締役は「期待に沿えるように育成につとめていきたい」と約束した。 別の株主からは、無観客からスタートする今季のプロ野球は、観客を迎え入れた後も人数が制限され、チケットがプラチナ化するため、「株主に優先を」と訴える声も上がったが却下。また2年前にスコアラーが盗撮の疑いで逮捕された件を持ち出し、謝罪や経営改善を求める意見も出たが、議長の角CEOが質疑を打ち切り、会場から拍手が起こる場面も。よくも悪くも阪急阪神HDにとってタイガースは象徴的存在なのである。 実は、株主から質問は飛ばなかったが、この日、そのタイガースの根底を揺るがす議決がなされていた。第3号議案として8人の阪急阪神HDの取締役が選任されたが、藤原オーナーが任期満了に伴い、外れることが正式決定したのだ。阪神電鉄からの取締役は秦雅夫社長ただ一人となった。藤原オーナーは阪神電鉄会長、球団オーナーの職には留まるが、これはタイガースの近未来を左右しかねない衝撃人事である。