新設ラッシュの「データサイエンス学部」を選ぶ上での4つの注意点とは?
デジタル人材/データサイエンティストの急速な需要増と供給不足
DXの急速な推進により、多くの企業が必要としているのが「データサイエンティスト」です。データサイエンティストとは、複雑で膨大な「ビッグデータ」を分析し、ビジネスに活用できる知見・情報を引き出し、ビジネス上の課題解決にコミットする専門家のことです。 日本ではデータサイエンスを専門的に学べる教育機関が少なく、データサイエンティスト人材の育成が追いついていません。また、データサイエンティストという職種が比較的新しいものであるため、実務経験を持つ人が少ないのが現状です。 経済産業省 商務情報政策局 情報処理振興課は「IT人材の不足は、2030年には約79万人に拡大する」と予測しており、今後ますます深刻化すると考えられています。このIT関連人材の中にはデータサイエンティストも含まれます。また、情報処理推進機構(IPA)は「日本では、DX推進人材の質・量の両側面において圧倒的に不足している」との調査結果を発表しています。このように、社会からの需要が拡大しているのに供給が追いついていないのが現状なのです。 政府は若い世代の東京一極集中を抑制する目的で、東京23区内の大学の定員増を制限していましたが、2023年「情報系の学部・学科に限って例外」としました。また、理工農分野の学部・学科について、学部再編等に必要な経費として20億円程度を最長10年まで定率補助する基金(「大学・高専機能強化支援事業」)を設立し、2023年、2024年と連続して支援校を選定・公表しています。この支援校の「情報系の学部」「理工農分野の学部」にデータサイエンス学部が含まれてます。このように見ていくと、データサイエンス学部の増加は国策といってよいでしょう。
データサイエンスはパソコンばかりやっている?
前述したように、データサイエンスは、データから新しい価値を見つけるための学問です。そのためには、まずは自ら課題が何であるかを考えたり発見したりすることが大切です。 課題発見からデータを分析し、課題解決のための有益な結論を導き出すには、大まかに以下のプロセスに分解できると思います。 課題を発見する:㋐達成したい目的を明確にする ㋑目的を達成するために必要な課題を洗い出す 仮説を立てる:㋒課題が生じる要因を仮説立てる データを分析する:㋓仮説を実証するためのデータを収集する ㋔収集したデータを分析する 分析結果を振り返る:㋕目的から分析結果までが一貫しているか振り返る 実行する:㋖システムを作ったり、組織の構成員を巻き込んだりして実行する 結果を検証する:㋗検証する 「データサイエンス学部で何を学ぶのか」ですでに触れたように、データサイエンスでは、まず自ら課題を発見したり、設定したりした課題を解決する取り組みを行います。したがって、【課題発見】が最初のステップとなります。何か困ったことがあった場合に「解決策を習っていないから」「マニュアルに書いていないから」とすぐに諦めてしまう人には、【課題発見】が最初にあることに違和感があるかもしれません。 一方で、自然に【課題発見】に向かう人もいます。「困っている原因は何だろう」「もっと便利にならないだろうか」と考え、課題が生じている原因について仮説を立て、仮説を検証しようと考える人です。目の前にある課題には正解がないかもしれませんし、正解がひとつではないかもしれません。そのような課題に対しても自分なりの答えを出していくことに興味や関心を持つ人にとっては、データサイエンスは魅力的な学問であると思います。 次に、データサイエンスには上記㋓㋔のように、データ分析が必須です。ビジネス上の例でいえば、勘や経験による意思決定ではなく、さまざまな社会的場面で収集される膨大なデータ(ビッグデータ)を分析することで得られた知見による、意思決定という点がポイントだといえます。そうなると㋓㋔は非常に重要であり、なくてはならないものです。 分析が必須であるがゆえに、データサイエンスというと、パソコンに向かって黙々と作業するという印象を持つ方もいらっしゃるかもしれません。しかしプロセス全体をよく見ると、それは一面でしかないことがわかります。 課題を発見・整理し、仮説を立て、ほかの人を巻き込んで実行するには、さまざまな人とのコミュニケーションが必要ですし、現場での調査なども欠かせません。黙々と個人ワークを行うことはありますが、グループで議論・討論する時間も少なくありません。実際、多くのデータサイエンス学部では、企業や自治体などとの協働により、学生教育と社会を連携した研究・教育を推進しているのです。