黒川伊保子 AI時代に「いい子」に育てても残念ながら使えない人材になるだけ…これからするべきは<甘やかす子育て>?
厚生労働省が公表した「令和5年 人口動態統計月報年計(概数)」によると、2023年の出生数は72万7277人で、前年の77万759人より4万3482人も減少しました。このような状況のなか、「孫をどうこうする前に、20世紀型の子育てをしてきた私たちが意識を変えなくては始まらない」と語るのは、脳科学・AI研究者の黒川伊保子さん。今回は、黒川さんの著書『孫のトリセツ』から一部引用・再編集してお届けします。 【書影】AI時代を生き抜く孫たちのために祖父母がすべきこととは?黒川伊保子『孫のトリセツ』 * * * * * * * ◆孫の人生は、祖父母の手にゆだねられている 2023年、生成AIと呼ばれる人工知能が、一般のビジネスシーンに彗星のように現れて、とうとう本格的なAI時代に突入した。 今の子どもたちは、私たちには想像もつかない世界を生きていくことになる。 新しい世界で活躍する人材は、甘やかされて育つ必要がある。 「いつだって気持ちを受け止めてもらえる」という安心感のもと、脳の中に浮かんだイメージの断片を無邪気に出力する癖を脳につけておかないとならないのである。 たとえ、幼子がミルクのコップを倒したとしても、彼(彼女)がこの星で初めて見る「ミルクの海」を一緒に楽しんでやる余裕のある人が、ひとりでも傍(そば)にいること。 幼子は、大人が困るようなことをするとき、けっして悪意なんかでやっちゃいない。 彼らの降り立った星が、どんなところか確認しているだけ。 その気持ちを受け止めてくれる人がいれば、彼(彼女)は自分の脳が正しく機能していることを知り、自分を信じることができる。 AI時代に活躍する人間に不可欠なのは、なんといっても自己肯定感で、思春期までに手に入れたそれは盤石だ。
◆20世紀の子育て 20世紀の子育ては、「躾けて、いい子にすること」だった。 親や社会が、(子どもにしてみれば)勝手にルールを決めて、ルールを順守できなければ頭ごなしに叱られる。 私たちはそうやって育ったし、子どもたちの世代も多くはそうやって育った。 頭ごなしのコミュニケーションで育てると、脳の中では「上が言うことを疑わず、言われたことを死に物狂いで遂行する回路」が活性化する。 組織の中で、精巧な歯車として機能する人材には必要不可欠な資質で、たとえば軍隊では、全員がこういう脳じゃなきゃ作戦が遂行できないし、皆の命も危ない。 20世紀の社会では、大量の歯車人間が必要とされていた。 今や機械がやっていることの多くを人間がやっていたから。 歯車人間、つまり「上に言われたことを疑わず、迅速に正確にやってのける人材」のこと。 こういう脳の持ち主は、塾に通って行う受験勉強が得意だし、大企業では確実に重宝されて出世していった。 「躾けて、いい子にする」子育ては、20世紀には、社会の需要とぴったり一致していたのである。 「いい子」は、おおむね幸せに生きられたので、その子育て法が否定されることもなかった。
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