黒川伊保子 AI時代に「いい子」に育てても残念ながら使えない人材になるだけ…これからするべきは<甘やかす子育て>?
◆子どもは「甘やかす時代」になった ――ところが、AI時代には、そんなわけにはいかない。 「いい子」に育てると、残念ながら使えない人材になってしまうからだ。 汎用の優等生の知識はAIが持っている。歯車人間の役割もAIがする。 人間に残されるのは、個性を発揮すること。 その脳にしか感じられないこと、その脳だからこそ生み出せることばが価値を生む時代になったのである。 そんな時代に、子どもたちの脳が感じていることを大人の論理で封じて、「いい子」に仕上げてどうなるわけ? 「上の言うことを疑わずに従う回路」を使うとき、ヒトは「感じたことを顕在意識に上げる回路」を封じる。 つまり、歯車人間に「斬新なアイデアを出せ」とか「自分のことばで表現しなさい」とか言ったって無理なわけ。 まぁ、汎用の優等生の脳は、育てるのに楽だし、人に嫌われないので、多少はいいけど、20世紀ほど「いい子」に追い込むことはない。 AI時代を大いに楽しんでほしいと思ったらね。 2024年以降を生きる、すべての親と祖父母たちに、この真実を知ってほしい。 子どもは、甘やかす時代になったってこと。 もちろん、言うことをなんでも聞くという意味じゃない。 言った気持ちを受け止めること。言った通りにするかどうかは、また別の話。
◆祖父母世代にできること そんなわけで、今からの子育てには、「子どもの気持ちに寄り添い、その言動にイラつかない子育て役」が不可欠ってことになるわけだけど、親たちにそれを求めるのは、かなり難しい。 実は、人類の生殖の大いなる仕組みによって、親たちの脳は、子どもに冷静になれないのである。 というわけで、私たち祖父母の登場である。生殖本能の働かない私たちだからこそ、できることがある。 孫の親たちをうまくリラックスさせて、孫の気持ちに寄り添い、孫の脳に一生ものの自己肯定感を構築してやること。 親たちよりもおおらかに、ときに孫のいたずらを一緒に楽しむくらいのユーモアを。 幼い孫にはもとより、成人した孫にだってそうしてあげたい。孫たちが、いつだって、人生を信じられるように。 よくよく考えてみれば、これまでだって、祖父母たちは、多かれ少なかれそうしてきたのである。 この世のあまたの動物の中で、人類だけが、生殖能力を失ってなお50年も生きる。それは、祖父母世代が、人類の子育ての一翼を担っているからである。 本当は、孫を持たない人もこの記事を読んでほしい。バスや電車で見かけた子連れの親たちに、優しい目線を向けてあげてほしいから。 親が世間を信じることができたら、子どもは世界を信じることができる。 AI時代、人類の役割は、無邪気な発想に集約してくる。 2050年の日本のために、この国にもっと無邪気さを――私は、願うように、そう思う。 ※本稿は、『孫のトリセツ』(扶桑社)の一部を再編集したものです。
黒川伊保子
【関連記事】
- 黒川伊保子 なぜ「夫婦喧嘩」は激しく憎み合うものなのか?愛した相手を虫唾が走るほど嫌いになるのは、いずれかが生き残るための「プログラム」である
- 黒川伊保子 女性が男性を遠ざける警戒スイッチは「恋する期間」しか解除されない。再びスイッチが入った後でも有効な<恋を永遠にする方法>とは
- 黒川伊保子 脳の固有振動を測ればその人の<寿命>がわかる!? 生まれてくるときに脳は「この地球で何年遊ぶか」を決めていた
- 憲法学者・木村草太×酒井順子 婚姻について学ぶ「世界と日本の違いとは?世界中に婚姻制度がある理由」
- 憲法学者・木村草太×酒井順子 婚姻について学ぶ「家制度の始まりから現在まで。導入される前は夫婦別姓だった」