J2京都新監督のチョウ氏は”パワハラ事件”からの出直しをどう誓ったか?
直接対決を終えた後の会見で、長澤氏は「昨年のいまごろは、一番の闇のなかにいた」と曹監督の心中を慮っている。最終的にJ2へ降格した2016シーズン。セカンドステージで10連敗を喫した苦境で誰かに愚痴をこぼしたくなったときに、曹監督がメールを送った相手が長澤氏だった。 返信したメールの文面で「間違っていない。やり続けろ」と叱咤激励するエールを綴っている長澤氏は、新体制発表会の席上でヘッドコーチとしての抱負を短い言葉のなかに凝縮させた。 「監督およびチームをサポートすることに徹して勝利につなげ、選手たちの成長を支えていきたい」 同じく新入閣の杉山弘一コーチ(元奈良クラブ監督)は、指揮官にとって元チームメイトとなる。プロの舞台でプレーしたいと望んだ曹監督が、当時JFLだった柏レイソルから浦和レッズへ移籍した1994シーズン。大阪商業大学から加入したルーキーが杉山コーチだった。 当時の浦和を率いていたメキシコ五輪の銅メダリスト、横山謙三監督は厳しい指導で有名だった。練習中における些細なミスでも怒声が飛んでくるなかで、標的になったのはセンターバックの曹監督と、浦和加入後にフォワードからサイドバックにコンバートされた杉山コーチだった。 そのシーズンに預かる選手たちの能力を引き出す、モチベーターとしての能力をあわせもつ曹監督がさっそく京都で残した名言を、杉山コーチは新体制発表会の席で明かしている。 「選手たちに『失敗とはミスをすることではなく、挑戦しないことなんだ』と話していました。僕はコーチとして、選手たちがたくさん挑戦できるような雰囲気を作ることに全力で取り組んでいきたい」 石川隆司コーチ(前AC長野パルセイロヘッドコーチ)、そして西形浩和フィジカルコーチ(前東京ヴェルディフィジカルコーチ)も、かつては湘南の下部組織やトップチームで曹監督と同じ時間を共有している。もっとも、京都で邂逅するのは4人のコーチングスタッフだけではない。 新加入選手の11人のなかには湘南から完全移籍した、曹監督の薫陶を色濃く受けているMF松田天馬とMF中川寛斗が名前を連ねている。特に25歳の松田は中盤のダイナモとして昨シーズンも33試合に出場しているが、プロ4シーズン目の戦いを初めてとなるJ2の舞台へ求めた。 2013シーズンから2年間、そして2019シーズンの前半に湘南でプレーしたMF武富孝介も浦和から完全移籍で加入。北海道コンサドーレ札幌から期限付き移籍したDF白井康介、昨シーズンから所属するFW野田隆之介を含めて、プロのキャリアで曹監督に指導された選手が5人を数える。