5000円超え、1万円超えも――小学生もハマる、「高級シャーペン」というロマン #なぜ話題
使用頻度が減った大人にとっては、軽くて廉価なイメージのシャープペンシル。しかし現在、10代、特に男子児童・生徒の間で、一本3000円以上の“高級シャーペン”が大ブームになっているという。熱中しているのは中高生をはじめ、中学受験を目指す男子児童たち。火付け役は、“文房具系YouTuber”だ。過熱する高級シャーペンブームの実像を追った。(撮影:殿村誠士/Yahoo!ニュース オリジナル 特集編集部)
小学校では使用禁止。だから萌える
都内の公立小学校に通うコウタ君(12)は、最難関男子校を目指して、小2の頃から大手中学受験塾Sに通っている。本番を2月に控え、勉強に励む毎日だ。小5でスイミングを、サッカーも小6になってすぐやめた。息抜きの一つだったゲームも封印。合格のためにストイックな生活を送るなか、唯一の息抜きがある。 「それは、シャーペンです」 得意げな顔でペンケースを開け、コレクションを披露してくれた。
「僕にとって今の“一軍”は、カヴェコスペシャル、S20、ヘキサゴナル、オレンズネロ……二軍は下段ですけど、たまに入れ替えて。新しいのをゲットしたら使って、塾で友達と見せ合うのが楽しい」 シャーペンといっても、芯の太さ以外、あまり変わりがないのでは。何が違う? 「触り心地、重心とか。モノによって全然違う。持てばわかる。気分に合わせたり、教科によって使い分けたり」 うっとりと撫で回し、それぞれの特徴を説明してくれる。大人顔負けの、完全なるマニアの顔だ。母親のユミコさん(48)が隣で苦笑する。
「小学校では、シャーペン禁止です。だから余計に萌えるみたい。塾では自由で、受験自体もシャーペンを許可しているところが多いです。塾の先生は『なるべく芯が太いものを使って』と言っていました。この子が持っているのは、一本3000~5000円のものが中心。誕生日や、模試の成績がよかったときにご褒美で買ってあげたりして。ゲームソフトより安いし、親としても買い与えることに罪悪感がないんですよね」 それにしても、ペンケースの中はパンパンだ。一本3000円と見積もっても、数万円分のシャーペンを持ち歩かせることに心配はないか。 「それは確かにあります。この子の塾ではないんですけど、盗難騒ぎがあるとも聞きます。全部にネームシールをつけてと言ってるんですけど」 志望校に見事合格したら、「おじいちゃんにたっぷりシャーペンを買ってもらうんだ」。まだまだ欲しいものがたくさんある、と目をギラつかせる。 「あとこれは、簡単には手に入らないんですけど。いつか“野原工芸”の木軸シャーペンが本気で欲しい。僕の塾では2人持ってるヤツがいて、うらやましくて仕方ない」