米雇用統計は大幅改善か 進むワクチン接種「飲食店」復活の兆し
新型コロナウイルスの世界的大流行(パンデミック)でダメージを受けた経済活動が、ワクチン接種の進む米国で力強い回復ぶりを見せています。中でも特に影響を受けた飲食店の復活ぶりが目につき、4月2日夜(日本時間)に発表される米雇用統計でも大幅な改善が予想されるといいます。第一生命経済研究所・藤代宏一主任エコノミストの解説です。 【グラフ】異常値ともいえる好調な米国消費 リスク要因は何か?
製造業は目覚ましい回復ぶり
速報性に優れたデータは3月に入った後の米経済が目覚ましい回復基調にあることを示唆しています。製造業の指標ではNY連銀製造業景況指数、フィラデルフィア連銀製造業景況指数がいずれも著しく改善しました。前者はコロナパンデミック発生後の最高水準、後者は1973年3月以来の異常値ともいうべき高水準を記録しました。 自動車を筆頭にスマホやタブレット端末といったITデバイス、家具、家電など耐久消費財の販売好調を受け、メーカーが生産活動を活発化していると思われます。これら2つの指標から判断すると、4月1日公表予定のISM製造業景況指数は非常に強い結果になりそうです。
飲食店の予約が7割強まで戻る
そして、ここへ来て特筆すべきは対面型サービス業の復活です。ワクチン接種が進展し、コロナ感染状況が好転する中、飲食店の営業制限が段階的に解除されたことで、急速に息を吹き返しつつあります。レストラン予約サイトのオープンテーブルが提供する日次データに基づくと、3月中旬の予約件数は2019年の同時期対比で7割強の水準まで持ち直しています。ニューヨークやロサンゼルスといった大都市を抱える州は依然として厳しい状況にある一方、テキサスなどでは2019年の水準を超えており、全体としてみればコロナパンデミック発生以降で最も高い水準にあります。 飲食店などの接客業は、需要減少が失業発生に直結し、コロナパンデミックで最も多くの失業を生み出した業種です。パンデミック発生前の2020年1月時点で同業種が全体の雇用者数に占める割合は1割程度で、最悪期にはその約半分の雇用が失われました。2021年2月までに8割ほどの水準に回復したとはいえ、それ以外の業種が96%程度まで戻しているのと比べると苦境が際立ちます。 今度はその逆で、力強い雇用回復が期待されます。というのも、飲食店は労働集約型産業ですから、良くも悪くも経営効率化に限界があるからです。したがって客足が回復すると、店側は直ちに従業員を増やす必要性が生じます。グラフをみる限り3、4月の雇用統計(それぞれ翌月第1金曜日に公表)では飲食店などの接客業の雇用者数が大幅に増加し、全体の失業率が低下することが見込まれます。