「年金月20万円の68歳元サラリーマン」定年後は物欲がなくなり浪費せず、食欲が落ちて外食もしない、質素で静かな暮らしも…老後破産に追い込まれたワケ【FPの助言】
金融庁/消費者庁/厚生労働省(自殺対策推進室)/法務省の「多重債務者対策をめぐる現状及び施策の動向」によると、この10年の自然人の自己破産事件の新受件数は6万件強~7万件強で推移しています。このうち高齢者の割合は、日本弁護士連合会消費者問題対策委員会「2020年破産事件及び個人再生事件記録調査」によると、60代の破産債務者は16.37%、70代以上では9.35%、あわせると25.72%です。全体の約4分の1を占めることがわかります。つまり、老後破産は決して他人事ではなく、誰にでも起こりうる可能性があることなのです。本記事では、鈴木さん(仮名)の事例とともに、老後の想定外の支出について、波多FP事務所の代表ファイナンシャルプランナーである波多勇気氏が解説します。 【早見表】年金に頼らず「夫婦で100歳まで生きる」ための貯蓄額
定年退職後の穏やかな日々…元サラリーマンの老後の落とし穴
サラリーマン生活を3年前に終えた鈴木直樹さん(仮名/68歳)は、月額20万円の年金収入をもとに、妻と2人で静かな老後生活を送っていました。毎日の楽しみは近所の図書館で本を読みふけり、インターネットで世界中のニュースを追いかけること。年を重ねて物欲が減ったためか浪費もせず、食欲も落ちてきたことから外食も控え、「これで老後は安心だ」と感じていました。 「年金があるから、質素に暮らせばそれなりにやっていけると思っていたんですよ」と鈴木さんは語ります。しかし、その「質素な暮らし」の陰で、家計を圧迫する要因が少しずつ積み重なっていたのです。定年後に発生したのは、まず医療費の増加でした。歳を取るにつれ、診察の回数が増え、薬の種類も増えたことで、月にかかる医療費が年々上昇。ある月には医療費が2万円を超え、予想外の支出に家計は一気に窮地に追い込まれました。 さらに、築30年を超える自宅の修繕も重なりました。日々のメンテナンス費用を後回しにした結果、屋根の大規模修理が必要になり、その費用は50万円を超える見積もりに。「この歳になってこんな大きな出費があるなんて、想像もしていなかったですよ……」と鈴木さんは落胆します。 その他にも予想外な支出がかさむ日々。鈴木さんは戸惑うばかりで専門家への相談も遅れてしまい、やむなく破産に追い込まれました。