「3年以内に辞めた人」の退職理由ナンバー1に「そりゃ辞めるわ…」しか言葉が出ない
超有名企業なら、黙っていても就活生からの応募が殺到するでしょう。では、認知度の低い中堅・中小企業はどうすればいいのでしょうか。本稿では、採用に悩む企業、人を採れない企業の経営者に向けた問題解決のためのヒントを紹介します。 【この記事の画像を見る】 ※本稿は、関野吉記『管理職のチカラ(管理職の力) ~採用も、業績も、人材育成で変わる~』(プレジデント社)の一部を抜粋・編集したものです。 ● 日本企業の採用コストは米国の2倍近く 中堅・中小企業はいったいどうやって人材を獲得すればいいのだろうか? 具体的な方法については後述するが、言っておきたいのは、人材会社や転職エージェントに頼るな、ということである。 日本企業の、平均的な一人当たりの採用コストは約103万円だが、アメリカでは約59万円。つまり、日本の採用コストは実にアメリカの2倍近い金額になっているのだ。 なぜここまでの差が生まれるのか。理由のひとつは、広告費の高さにある。図3に示すように、日本企業は求人広告に支払う金額が全体の3分の1と、非常に大きい。 また、求人サイトの利用率も85%と極めて高く、日本企業が採用を「外部に依存している」ことがはっきりと見てとれる。採用の外部依存が採用コストを引き上げていることは間違いないのである。 では、アメリカはどうかといえば、図4に示す通り「リファラル(縁故、知人による紹介)」と自社採用の比率が大きく、この2つが約50%を占めている。 アメリカ企業の多くは、自分たちの理念をしっかり発信すると同時に、自分たちは社員に対してこう向き合い、こんな福利厚生を提供していると自ら発信することで、自力で採用する体制を強化しているのだ。
● ナイキの驚くべき教育施設 たとえば、スポーツシューズメーカーのナイキはオレゴン州の郊外に本社オフィスを構えているが、東京ドーム45個分という広大な敷地(キャンパスと呼ぶ)の中に、本社機能や研究開発機関だけでなく、教育施設なども備えている。 社員だけでなくその子どもまでが、オリンピック選手などの超一流から世界最高水準の教育を受けられるのだ。親も自ら子どもに良い教育を受けさせようと思ったら多額の費用がかかってしまうが、会社が負担してくれるのは大変ありがたいだろう。 ナイキが社員に投資していることは、この陣容を見ただけで誰の目にも明らかであり、これが自社採用の強力な武器になっているのである。 日本企業の多くは広告宣伝に(ムダな)金をかけ、人材の採用にも(ムダな)金をかけて外部任せにしており、しかも内部留保を厚くしているため、賃金が安いだけでなく、社員の福利厚生にかける費用も世界的に見て極めて少ないのが実態である。 広告代理店や人材会社、転職エージェントといった「他社・他者」にお金を使う余裕があるなら、社員の福利厚生にそのお金を回した方が、はるかに企業イメージのアップにつながるし、しっかりとしたプレスリリースを作成してメディアに取材してもらえば、ムダな広告にお金を使わなくても自社の情報を拡散することは可能なのだ。 採用活動に関する日本企業の取り組みは、アメリカに比べて非常に遅れていると言わざるを得ないのである。 近年、M&A案件が急増しているが、その最大の理由は、中堅・中小企業の後継者不在問題にある。図5に示すように、東京商工リサーチの調査(2023年)によれば、全国・全業種約26万6000社のうち、後継者が「いない」と回答した企業は実に16万社に上る。その結果、あきらめ休廃業(黒字休廃業)が急増しているのである。 おそらく年間の売上高40億円あたりが分水嶺になると思うが、40億円以下の企業には、人材の採用や育成にかける資金もなく、企業価値を引き上げるのも、後継者を育成するのも難しいという現状がある。