東京ディズニー「夢の国」に暗雲…入園者30万人減の「意外な原因」とは?
「夢の国」には「光」もあれば「闇」もある――。東京ディズニーリゾート(東京ディズニーランド・東京ディズニーシー)の運営企業、オリエンタルランドの直近決算を前後編に分けて徹底解説する。前編は「闇」にフォーカスし、魔法だけではどうにもならない厳しい現実と、見落としがちなリスクを深掘りする。顧客離れの要因、巨額投資の代償、価格戦略の影とは?(公認会計士 白井敬祐)● 東京ディズニーリゾートの業績 「増収減益」から読み解くリスクとは 【表で解説】巨額投資の代償? コストが大幅に増加!価格戦略の影 チケット値上げがもたらした懸念 「夢の国」――。時にこう呼ばれる東京ディズニーランド・シーには、子どもも大人も心を奪われる魅力があります。非日常の魔法に包まれ、現実の悩みから解放されるひとときを楽しむ人も多いでしょう。 その夢の国、東京ディズニーリゾートを運営するオリエンタルランドは、2024年3月期決算で過去最高益を達成しました。背景には開業40周年記念イベントや円安による訪日外国人客(インバウンド)の増加、そしてチケット値上げの影響がありました。好業績をたたき出したことで、「夢の国の繁栄は未来永劫続いていく」と期待した人もいたかもしれません。 ところが、同社が10月30日に25年3月期第2四半期(24年4~9月)の決算を発表すると、様子は一変。過去最高益という絶頂から一転し、暗雲が垂れ込めています。「増収減益」だったからです。 夢の国を維持する舞台裏には、どのような課題が待ち受けているのでしょうか?そこには、魔法だけではどうにもならない厳しい現実と、見落としがちなリスクの数々がありそうです。 本稿では、ビジネス目線で、東京ディズニーリゾートに潜む試練を浮き彫りにしていきます。オリエンタルランドが直面する課題を、決算から解き明かしていきましょう。
オリエンタルランドの25年3月期第2四半期業績は、売上高は前年同期比で4.5%増加し、2972億円に達しました。一方で、営業利益は同18%減少し、631億円にとどまりました。前述しましたが、増収減益です。 背景には、記録的な猛暑による入園者数の減少、人件費や減価償却費の増加、そしてチケット値上げによる顧客動向の変化など、複数の要因が影響しています。順に、詳しく見ていきましょう。 ● 新エリア開業でも入園者は約30万人減 顧客離れの要因とは? 6月6日、総投資額約3200億円をかけて東京ディズニーシーに新しいエリアが誕生しました。その名も、「ファンタジースプリングス」。「アナと雪の女王」や「ラプンツェル」「ピーターパン」といった人気キャラクターをテーマにし、新ホテル「ファンタジースプリングスホテル」も併設され、ディズニーファンなら必ず訪れたい魅力的な場所に仕上がっています。 しかし、この新エリアをもってしても、猛暑という強敵には勝てなかったようです。日本全土を襲った記録的な猛暑は、特に7月から9月の入園者数に大きな影響を与えました。新エリア開業で増加したはずの来園者数を、猛暑による減少が上回り、期待していたほどの効果は得られなかったのです。 実は筆者も9月に新エリアを訪れましたが、「暑すぎる」の一言に尽きました。人気アトラクションは1~2時間待ちは当たり前で、待機場所には日陰が少なく、屋内も人混みで空調が効きにくいのか、非常に暑い状態でした。 予想を超える猛暑に空調設備の増強が追いつかなかったのかもしれません。決算説明会でも、今後の猛暑に対応するため空調の増強や日陰の設置が予定されているとの発表がありました。 レジャー業界において天候は避けられないリスクですが、世界的な気候変動の進行と共に、このリスクは加速度的に高まっています。入園者数の減少が収益に直結する中で、こうした新たなリスクに対する備えが問われていると言えるでしょう。