コロナ不況なのになぜ空前の株高? 謎ひも解く3つの要因
2020年はコロナ禍によって国内外経済が大きな打撃を受けた一方、景気の鏡とも言われる日経平均株価は約30年ぶりの高値で終えました。景気が悪いのに株価が上がる、この構図は何とも理解に苦しみますが、以下の点を踏まえると、いくらか納得感が得られるかもしれません。(第一生命経済研究所・藤代宏一主任エコノミスト) 【グラフ】史上最高値に迫る“もう一つ”の日経平均「配当込み」
(1)影響は非上場の中小飲食店に集中
まず、コロナ禍の打撃が飲食業に集中していることが重要です。特に影響が大きかったのは、個人事業主や中小企業が経営する飲食店です。飲食業界は、コロナ禍発生以前からの構図として、競争が激しく利益率が低いため、わずかな売り上げ減少でも赤字に転落してしまう傾向がありました。そこにコロナ禍の売上急減です。政策支援があったとはいえ、資本力の弱い飲食店が従業員解雇や閉店を余儀なくされてしまうのは当然です。閑散とした飲食店や閉店を知らせる貼り紙は、コロナ不況を象徴する光景となりました。 ただし、日経平均やTOPIXといった株価指数はこうした飲食店の苦境をほとんど反映しません。もちろん、株式を上場する大手飲食店の株価は一部下落しましたが、それが全体に占める割合はわずかです。それどころか、株式を上場する大手飲食店の中には、中小のライバル飲食店の閉店による競争緩和が既存店の環境改善につながる、あるいは新規出店が容易になるとの見方から、株価が上昇するケースもありました。
(2)“コト”から“モノ”へ 製造業で追い風も
次に、本来なら飲食、旅行、エンターテインメントといった対面や移動を伴う “コト”に使われるはずだったおカネはどこに向かったのか考えてみます。答えは“モノ”です。具体的には自動車、ITデバイス(スマホ、タブレット、PC)、家電、家具といった耐久消費財です。 このうち自動車の販売好調は米国と中国に限られた現象ですが、輸出増加を通じて日本企業の業績改善に寄与しました。またITデバイス、家電、家具は国内外で売上が堅調に推移しました。こうした製品を作る製造業は大企業が多く、それら企業は株式を上場しています。日経平均に含まれる225社のうち約6割は製造業ですから、コロナ禍が追い風になった企業はそれなりにあります。