神戸が2度のVAR判定に泣き延長でACL決勝進出を逃す…三木谷会長は意味深ツイート
迎えた後半7分に獲得した右CKで試合が動いた。直前にも蹴った右CKをニアサイドへ、低く速いクロスを供給していたMF安井拓也は、一転してペナルティーエリアの右角あたりへ侵入してきたゲームキャプテン、MF山口蛍へのグラウンダーのボールを送る。 実は安井がボールを蹴る直前に、神戸の選手4人がいっせいにニアサイドへ移動していた。蔚山の選手たちを誘きよせるサインプレーが鮮やかに的中し、フリーの状況になった山口が右足を一閃。ペナルティーエリアの対角線を縫うように、蔚山ゴールの左隅へ待望の先制点が突き刺さった。 同30分には敵陣で安井が相手ボールを奪取。すかさず発動させたショートカウンターから、ペナルティーエリア内の右側へ走り込んでいった安井が右足を振り抜く。シュートは相手キーパーに防がれたものの、逆サイドを詰めていた途中出場の21歳、FW佐々木大樹がこぼれ球を押し込んだ。 しかし、勝負を決する2点目が決まったかと思われた直後に、ナワフ・シュクララ主審(バーレーン)がおもむろに試合を中断する。ビデオ・アシスタント・レフェリー(VAR)とのやり取りとモニターによる映像確認を経て、安井のボール奪取時に反則があったとしてゴールが取り消された。 準々決勝から導入されているVARは同36分にも試合を大きく動かす。味方が放ったシュートに、前方にいたFWビヨルン・ヨハンセンがわずかにボールに触れる。コースを変えた一撃は神戸ゴールの右隅へ転がり込んだが、ヨハンセンのオフサイドと判断した副審が旗を上げた。 シュクララ主審も一度はオフサイドと判定したが、VARの連絡を受けて再び試合を中断。今度はシュクララ主審が映像を確認するまでもなく、VARのみの判断でゴールが認められた。直後に蔚山のペナルティーエリア付近で佐々木が倒されるも、チェックに入ったVARはファウルを取らなかった。
VARが介入するたびに神戸にとって不利な判定が下され、試合の流れが蔚山へと傾いていく。冷静な心理状態を保つのが難しい判定の連続を、DF酒井高徳は「事実というものを(VARが)見ているのであれば、しょうがないことだと思います」と努めて潔く受け入れた。 「いままでわからなかったところがサッカーの醍醐味であったのかなと思いますけど、世界のルールが変わってきて、そのルールに則ってやっているので。すべてを含めて、今日の結果だと思っています」 1-1のまま突入した延長前半には、GK前川黛也がビッグセーブを連発してゴールを死守。後半開始早々には蔚山のパスミスを拾ったFWドウグラスが相手GKと1対1になったが、膨らんだ勝ち越し弾への期待はドウグラスがFW古橋亨梧へのパスを選んだ瞬間に潰えてしまった。 そして、再びPK戦に入る予感が漂ってきた後半終了間際に、左サイドから放たれたクロスに対して果敢に飛び出した前川がキャッチし損ねてしまう。こぼれ球をつかもうとネグランと激しく争った際にペナルティーエリア内で倒したとして、シュクララ主審がPKを宣告した。 残り時間がほとんどない状況で奪われたリードは、2試合続けて延長戦を戦う神戸の選手たちにとってあまりにも重たかった。PKのコースを読みながらわずかに届かなかった前川は、すべての責任を背負うかのように敗退直後から号泣する。 今シーズンに入って出場機会を大幅に増やしている26歳の前川をかばうように、山口は「単純に自分たちより蔚山の方が強かった」と振り返った。 「いまの自分たちがもっている力をすべて出したと思う。結果を出せなくて(日本で応援してくれているファン・サポーターに)すごく申し訳ないですけど、ここまで来られたことに対して誇りをもって、胸を張って日本に帰りたい」