神戸が執念イニエスタ投入でPK戦制しACL4強進出!
小刻みなステップで助走を踏みながら、ヴィッセル神戸の7人目のキッカー、FW藤本憲明は水原三星(韓国)の守護神、ヤン・ヒョンモの動きを最後まで見極めた。 ボールを蹴る刹那も前方をにらんだまま、視線を介して駆け引きを演じる。果たして、藤本の右足から放たれた一撃は左へ跳んだヤン・ヒョンモの逆を突いて、ゴール右隅へ正確無比に突き刺さった。死闘に決着がついた瞬間、日本勢で唯一、ACLに勝ち残っている神戸のベスト4進出が決まった。 新型コロナウイルスによる長期中断をへて、先月下旬から中東カタールで集中開催の形で再開されたACL。10日には東地区の準々決勝2試合が行われ、グループGでも同組だった神戸と水原三星の今大会3度目の対決は1-1のまま延長戦でも決着がつかず、PK戦へともつれ込んだ。 先蹴りの水原三星の1番手、FWキム・ガニが神戸GK前川黛也の逆を突いて確実に決める。後蹴りの神戸の1番手としてペナルティースポットへと近づいていったのは先発を外れ、延長戦の後半8分からようやく投入されていたキャプテン、MFアンドレス・イニエスタだった。 「アンドレスはヴィッセル神戸のキャプテンであり、誰からもリスペクトされる存在です。彼の存在自体が我々を前向きに、ポジティブにしてくれる」 死闘の余韻が残る試合後の記者会見。神戸の三浦淳寛監督は7日の上海上港(中国)との決勝トーナメント1回戦で右足のつけ根を痛め、後半23分に途中交代を余儀なくされていたイニエスタへ勝利を託してピッチへ送り出し、重圧がかかるPK戦の1番手を託したことを明かした。 「PKを1番手で我々のキャプテンが決めたことで、間違いなく勝利につながったと思っています」 イニエスタの状態が万全にはほど遠かったことは、ヤン・ヒョンモの逆を突く形でPKをゴール中央へ確実に決めた直後に右足のつけ根を押さえ、苦悶の表情を浮かべながら前かがみになった一挙手一投足が如実に物語っていた。しかし、手負いの姿が続く仲間たちに勇気と自信を与えた。