鈴木彩艶も“伝説”となるのか。偉大なGKを生み出し続けてきたパルマの軌跡。破産宣告から、不死鳥の如く復活【コラム】
一度は破産宣告も…
90年代に数々のタイトルを獲得したパルマだが、2000年代に入ってからは、01/02シーズンのコッパ・イタリア制覇を最後に、セリエAでの競争力を失ってしまった。2015年3月には、破産を宣告し、15/16シーズンは、セミプロのセリエDからの再スタートを余儀なくされるが、3年連続の昇格を遂げ、18/19シーズンにはセリエAに復帰を成し遂げた。 しかし、20/21シーズンは、またしてもセリエBに降格。2年の“煉獄生活”を経て、23/24シーズンは首位の座を射止め、不死鳥の如くセリエAに返り咲いた。クラブは、2020年からアメリカ人のカイル・クラウゼがオーナーを務めている。イタリアにルーツを持つクラウゼは、アメリカやイタリアなどで食料品や不動産、スポーツ事業を展開するクラウゼ・グループのCEOだ。 パルマの他、USLチャンピオンシップ(北米2部リーグに相当)に所属のプロ・アイオワとUSLリーグ2(同4部リーグ相当)のデモイン・メナスも所有しており、2025年6月には、現在の本拠地、エンニオ・タルディーニ・スタジアムを大改修する形で、2万986人収容の新スタジアムを起工するプロジェクトを進めている。投資を目的としたお飾り的なオーナーではなく、「パルマの男女の試合をすべて観ている」と明言するほど、サッカーを愛する人物だ。 パリ・サンジェルマンからは、アナリストのマチュー・ラコムを引き抜き、30人以上のスタッフを擁するパフォーマンス及びアナリティクス部門のチーフに就任させている。これは、セリエAを含めても、最も多い人員だ。スカウトにも当然力を注いでおり、鈴木の獲得も、多くのデータを集計して獲得に至った経緯が伺える。
パルマを率いるのは元Jリーグ監督
ピッチの上でチームを司るのは、ファビオ・ペッキア。ラツィオ州の最南部、ラティーナ県フォルミア生まれの50歳だ。現役時代は、ナポリやボローニャでプレーし、2009年から、現役を引退したフォッジャで、指導者としての道を歩み始める。転機が訪れたのは、2013年。ラファエル・ベニーテスの右腕となり、ナポリ、レアル・マドリード、ニューカッスルで助監督を務めた。 2016年には、当時セリエBに所属のベローナの指揮官に就任し、セリエAを昇格させ、17/18シーズンに自ら初めてセリエAでの采配を振るが、19位に終わり、残留を勝ち取ることはならなかった。2019年、指導の舞台は、日本へと移る。当時J2のアビスパ福岡の監督に抜擢されるが、6月には、“個人的な理由”で辞任。しかし、その動機は明らかで、すぐに、ユベントスのセカンドチーム(3部リーグ)での監督就任が発表された。 2021年1月にクレモネーゼの指揮官に任命され、2年目には、26年ぶりのセリエA昇格を実現させ、また、FIGC(イタリア・サッカー連盟)からは、セリエBの最優秀監督賞を受賞した。だが、ペッキアは、セリエAでの挑戦を選ばずに契約を解除。セリエBに降格したパルマを再生させる道を選んだ。 1年目はシーズンを4位でフィニッシュ。昇格プレーオフでは、5位のカリアリに2戦合計2-3と敗れ、昇格は叶わず。それでも、2年目の23/24シーズンは21勝13分け4敗の勝ち点76で堂々の1位でセリエA復帰を勝ち取った。得点は1位のベネツィア(69)に次ぐ66。失点は1位のクレモネーゼ(32)に次いで35だった。