世界中の釣りオヤジの悩みを解決!? 神施設に学ぶ“そこそこ起業”の始め方 「この価格でこのサービスはアリ?」
■「価格」をつけることから始めよう これこそ私が明日からでも始めるべき「そこそこ起業」だと興奮しました。「魚のさばき屋」さんをキッチンカーで始めるとして、最低限の初期投資と一日の売上がどれくらいになるかしらと、よく遊びに行く漁港の釣り船の数と一日あたりの釣果を確かめ始めました。 ですが同時に、「みんながほしいサービスが、未だにほとんど提供されていないのはなぜなんだ?」という疑問が湧き、考え込んでしまいました。
ニーズのあるところにサービスが生まれる。これは経営学以前の常識だと思います。ところが、「世界中の釣り人の共通のニーズ」である「釣った魚をさばいてくれるサービス」そのものが、「釣人の駅」を含めて日本には数えるほどしかありません。 ニーズがあるのに、サービスが生まれないというのはどういうことなのでしょうか? そんなことを考えている時に思い出したのが、ヴァティン(パリ・ナンテール大学)の価値評価に関する論文です。
■「価値」はいかにして生まれるのか? 私たちはついつい、そのサービスが希少であるとか、その商品に用いられている素材や技術が高価であるとか、提供するのに大変な労力がかかっているとか、商品・サービスに内在する何かに「価値」の源泉があると考えがちです。 それに対してヴァティンは「価値評価のもとで、価値が発生する」という、大胆なアプローチを試みます。例えば金は、それそのものはただの鉱物でしかありません。
金1グラムあたりの換算金額という価値評価の指標とセットとなって、初めて鉱物としての金は他の商品やサービスと交換可能な「財産」という価値が生じているわけです。 これは金のような鉱物資源に限った話ではありません。私たちが勉強を通じて蓄積した知識や、肉体を利用して提供する労働といった活動そのものも、成績やノルマの達成度などで「評価される」ことで初めて、金銭(給与)と交換が可能になり価値が生まれます。 このヴァティンの価値評価という考え方を踏まえると、「釣った魚をさばいてほしい」というニーズが確かにあるのにサービスがほとんど生まれないのは、「魚をさばく」というサービスをどう評価するか、「価格」を決定できる指標がないことが原因と考えることができるのではないでしょうか?