ボクシングに転向する那須川天心の夢カードはvs“世界最強モンスター”井上尚弥…実現の可能性は?
大手ボクシングプロモーションの関係者は、こんな話をしていた。 「やるならまずはバンタム級。まだ若いし落とせる。キックは足の筋肉が必要だが、ボクシングでは、そこを削ぎ落とせる。スーパーバンタム、フェザー級でやるにはパワーが足りない」 ボクシングの減量は、パフォーマンスを優先に考え、5、6キロがベストと考えられている。通常体重が60、61キロの天心からすれば、55.34キロがリミットのスーパーバンタム級がベストなのだろう。実際、55キロ契約で試合をしたケースではキレとスピードが増していた。だが、ボクシングとなると、足の筋肉は多少削ぎ落せる。その部分を差し引くと、まずは53.52キロのバンタム級が適正階級ということになるのかもしれない。 しかも、世界バンタム級の3団体統一王者の井上尚弥が年内に4団体を統一すれば、スーパーバンタム級に転級するため、4つのベルトがごそっと空位となる。年内にデビューしても、その決定戦への出場には、とうてい間に合わないが、まだ不安定な王者に対してベルト奪取のチャンスは広がる。モンスターが去った後のバンタム級は狙い目なのだ。もしバンタム級に落とすのが無理であれば、スーパーバンタム級となる。そこに立ちはだかる巨星が井上尚弥だ。 天心の第2章で、vs井上尚弥戦が実現すれば、天心vs武尊のインパクトを超えるものになることは間違いない。 だが、そう簡単には井上尚弥と対戦するステージまで上がれない。挑戦するには、まず世界ベルトというパスポートが必要になる。バンタム級で、まずベルトを取ってから階級を上げて挑戦するのか。それともスーパーバンタム級でベルトを取って統一戦として戦うのか。いずれしろ2人の階級が重なっているだけに、このドリームマッチの実現の可能性がゼロかと問わればそうではない。 ただタイムリミットがある。井上が35歳引退説を掲げているからだ。 ノニト・ドネアとの再戦を衝撃の2ラウンドKOでまとめた先日の試合の一夜明け会見でも改めて「(引退は)35歳ですかね。自分で決めるんじゃなく、会長だったり、父だったり(との相談)…。自分では衰えはわかりづらい。スピード、反射(の衰え)は自分でわからない」と語っていた。 となるとタイムリミットは6年である。 井上尚弥の所属ジムの大橋秀行会長は、以前から天心のポテンシャルを評価して「天心3戦世界王者説」を唱えてきた。プロ3戦目でWBC世界スーパーライト級王者となったセンサク・ムアンスリン(タイ)の持つ世界最速記録への挑戦である。 現在、国内では日本、或いは地域タイトル、または、それに相当する試合を行わねば世界挑戦ができないルールとなっている。となるとA級デビューを認めてもらい、デビュー戦で、日本&東洋太平洋王者だった柴田明雄とノンタイトルで対戦した元WBA世界ミドル級スーパー王者の村田諒太(帝拳)のように、ノンタイトルであっても、日本王者、あるいは東洋太平洋王者と対戦し、次戦で世界ランク入りする試合をクリアしなければ3戦目での世界挑戦は難しい。