ボクシングに転向する那須川天心の夢カードはvs“世界最強モンスター”井上尚弥…実現の可能性は?
この日、天心は、ボクサーとしての“出世”にどれだけのスピード感を求めているのかを聞かれて「イメージは色々してます。あとは僕がどこまでできるのかというところ。そこがまだわからないとイメージできない。そこからじゃないですか」と答えた。 そもそもボクシングで通用するか、しないのか。また所属予定先のジムが、どんな育成プランを考えているかが影響する。ただ井上尚弥とのドリームマッチを実現するためには、世界ベルトを獲得して、そこからさらに力をつけて防衛を重ねることや、統一王者、2階級制覇などを成し遂げ、世界的な評価をアップさせ、対決気運を高める必要がある。そうなると時間はあるようでない。 この日の会見で天心に「23歳と言えどボクシングの世界では時間があるようでない」と質問すると「無いわけじゃないですよね」と答え「(ボクサーとしてのスタートの)時期は特に分からないですが、とりあえず1回落ち着きたい。(休養を)5か月(取りたい)とか(の発言)は冗談ですが」と回答した。 ちなみに井上尚弥は、デビューから6戦目で世界タイトルを獲得、世界的評価を得ることになったWBO世界スーパーフライ級王者、オマール・ナルバエス(アルゼンチン)を2ラウンドで沈めるまで2年だった。 またバンタム、スーパーバンタム級には、国内にも強敵がゴロゴロいる。バンタム級での世界奪取を狙っている井上尚弥の実弟、元WBC世界バンタム級暫定王者で、現日本&WBOアジアパシフィック・スーパーバンタム級王者の拓真(大橋)がいるし、8月に東洋太平洋スーパーバンタム級タイトルへの挑戦が決まった元K-1王者の武居由樹(大橋)は、天心との対戦を心待ちにしている。また井上尚弥との対戦を熱望している元2階級制覇王者の亀田和毅(TRY BOX 平成西山)もスーパーバンタム級だ。彼らは、井上尚弥とのドリームマッチの前に天心に待ったをかける国内ライバルとなるだろう。 天心は、武尊という好敵手に出会うまで、強すぎて対戦相手が不在となりモチベーションを維持するのに苦労した。だが、世界の強敵が待ち受けるボクシング界では、その苦悩と向かい合う心配は当面はない。武尊戦で「強くなれた」と天心が実感するように、その環境に置かれれば、さらに急激に成長する可能性が高い。異例の転向を決めた天心の決断は、格闘家として正解だろう。天心が打ち破った武尊はもとより、キックボクサー時代に踏み越えていったファイターたちの誇りを守るためにも負けられない戦いがボクシング界に待っている。 (文責・本郷陽一/論スポ、スポーツタイムズ通信社)