なぜ森保Jは豹変したのか…サウジに2-0快勝でW杯出場王手…長友佑都「僕の魂の叫び。聞こえましたか?」
象徴的なシーンが、伊東の追加点の直前に生まれている。 サウジアラビアのペナルティーエリア右角あたりで守田、伊東、遠藤がボールホルダーを激しくチェック。こぼれ球を遠藤が左前方の南野に素早くつけ、南野からの横パスを相手ともつれ合いながら、攻め上がってきた長友が強引にクロスに変えた。 「あれ、アシストにつけてくれるんですか? 狙ってはいないんですけど、じゃあ狙ったことにしておいてください。ゴールを決めた純也(伊東)に感謝ですね」 公式記録のアシスト欄に背番号の「5」が記されていると、囲み取材でメディアから知らされた長友が再び声を弾ませた。板倉が「重圧」を、守田が「反省」を感じながら大一番に臨んだなかで、長友は「感謝」を感じていたと明かす。 「みなさんからいただいたたくさんの批判が、僕の心に火をつけてくれた。あらためて批判は自分にとってのガソリンであり、必要なものだとわかった。振り返れば、いろいろな経験を積んできたなかで、自分のなかに慢心のようなものがあったのかなと思っている。僕の原点に返らせてくれた意味で、みなさんには心から感謝しています」 代表OBを含めたメディアだけでなく、ネット上に投稿された数多くの批判に、長友は「代表への思いがなければ逃げていますよね」と思わず苦笑した。アジア最終予選を戦いながら抱き続けた三者三様の思いを、それぞれが独自の思考回路を介して乗り越え、そこへ伊東が絶対的なスピードと急速に開花させつつある得点感覚を添えた。 攻守でサウジアラビアを凌駕した結果が、敵地ジッダで昨年10月に喫した黒星へのリベンジであり、7大会連続7度目のワールドカップ出場への王手だった。もっとも、試合後の公式会見で森保一監督が強調したように、日本はまだ何も手にしていない。 深夜に行われた一戦で、オーストラリアがオマーンと2-2で引き分けた。シリアに2-0で快勝した韓国が2位以内を確定させイランに続いてカタール行きを決めたグループAとは対照的に、グループBは首位のサウジアラビアを勝ち点1ポイント差で日本が追い、さらに3差でオーストラリアが続く。2試合を残した状況で、カタール行きの切符2枚はまだ持ち主が決まっていない。 「今日だけは称賛してくれと、後輩たちにも言いました。じゃないと、(ガソリンがあふれすぎて)燃えちゃうので。なので、みなさんもお願いします」 最後に長友が豪快に笑い飛ばした。過去3度のアジア最終予選で2分け1敗と、未勝利が続く敵地でオーストラリアに勝てばカタール行きが決まる。再び厳しい戦いが待つ3月の最終シリーズへ。序盤で1勝2敗と黒星が先行した苦境で、それぞれが試行錯誤を重ねた末にようやく手繰り寄せた快勝が、森保ジャパンの大きな自信へと変わっていく。 (文責・藤江直人/スポーツライター)